欧州中銀、追加金融緩和を見送り

欧州中央銀行(ECB)は8日にフランクフルトで開いた定例政策理事会で、現行金融政策の維持を決めた。ユーロ圏の消費者物価は低迷し、英国のEU離脱決定などで景気の不透明感も増しているが、3月に決めた追加金融緩和の効果を見極める必要があると判断し、追加金融緩和を見送った。

ECBは主要政策金利を0%、民間金融機関が余った資金をECBに預け入れる際の金利(中銀預金金利)をマイナス0.4%に据え置いた。国債などを買い取る量的金融緩和の拡充も打ち出さなかった。

ユーロ圏ではインフレ率は前年同月比0.2%と、ECBが目標とする2%前後を大きく下回り、景気回復の足取りも重い。ECBは同日発表した最新の内部経済予測で、16年の域内総生産(GDP)予想成長率を1.7%とし、前回(6月)の1.6%から上方修正したものの、17年と18年は1.7%から1.6%に引き下げた。予想インフレ率は16年が0.2%、17年が1.2%。16年は据え置いたが、17年は0.1ポイント下方修正した。

市場ではECBが今回の理事会で量的緩和拡充を決めるとみる向きもあった。しかし、ドラギ総裁は記者会見で、現行の金融政策が有効に機能していると指摘。下方修正が小幅だったことにも言及し、現時点で追加緩和の必要性はないとの見解を示した。

一方でドラギ総裁は、必要に応じて追加の量的緩和に踏み切る用意があると言明。ECB内の委員会に追加措置実施に向けた「あらゆる選択肢」を検討するよう指示したことを明らかにした。

国債などを毎月800億ユーロ買い取ることを柱とする量的緩和をめぐっては、ECBによる国債買い取り額が前週に総額1兆ユーロの大台を突破した。しかし、物価押し上げ効果は限定的で、しかも買い取り対象となる国債が枯渇しつつある。すでにエストニア国債の買い取りを中止しているが、8月はルクセンブルク国債の購入を見送った。

ドラギ総裁はこうした状況を受けて、追加緩和では買い取り対象となる資産の拡大を検討しているもよう。市場では償還期間が30年の長期国債や銀行の不良債権なども含めるといった見方が浮上している。

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