欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2016/9/19

EU情報

EU27カ国が課題克服の「行程表」策定、英離脱後の結束維持で

この記事の要約

EUの英国を除く27カ国が16日、スロバキアの首都ブラチスラバで開いた非公式首脳会議は、EUが英国の離脱という危機を克服し、結束を維持するために必要な課題に取り組む決意を示す「ブラチスラバ宣言」を採択して閉幕した。加盟国 […]

EUの英国を除く27カ国が16日、スロバキアの首都ブラチスラバで開いた非公式首脳会議は、EUが英国の離脱という危機を克服し、結束を維持するために必要な課題に取り組む決意を示す「ブラチスラバ宣言」を採択して閉幕した。加盟国は難民流入への対応、テロ対策、経済問題などを優先課題とし、取り組みを強化することで一致。その道筋を示すロードマップ(行程表)をまとめ、今後6カ月をかけて具体的な対策を練る。

EUでは英国が6月の国民投票でEU離脱を決めたことを受けて、フランスやオランダなどで極右勢力が勢いづき、反EU感情が高まっている。また、難民受け入れの分担をめぐる中東欧諸国とドイツなどの亀裂が拡大。経済も低成長が続いている。

今回の非公式首脳会議は、こうした状況に対応し、EUの求心力を回復させることを念頭に開かれた。採択されたブラチスラバ宣言は「EUは完全ではないが、我々が直面する新たな課題に対応する媒介(インストゥルメント)だ」と指摘。英の離脱といった危機を乗り越えるため、加盟国が結束して懸案への「共通の解決策」を見出していく決意を示した。

同宣言に盛り込まれた行程表は、中東などからの難民流入、テロ対策など治安強化、防衛協力の強化、経済の底上げを優先課題に指定。難民問題については、昨年のような大量流入の再発を防ぐため、域外との国境管理を強化することを打ち出した。難民の中継地となっているトルコと隣接するブルガリアの国境管理を支援する方針も示した。

治安対策では各国当局による情報交換の強化などを進める。経済に関しては、欧州委員会のユンケル委員長が発表した大型投資計画の拡充(後続記事参照)を12月に決めることや、若者の雇用改善を図ることなどを盛り込んだ。

27カ国はEUの前身である欧州経済共同体(EEC)を設立する条約(ローマ条約)の締結60周年に合わせて、来年3月にローマで首脳会議を開く予定。それまでに各問題の具体策を詰め、同会議で詳細な計画をまとめる方針だ。

英との離脱交渉、1月にも開始

一方、EUのトゥスク大統領(欧州理事会常任議長)は首脳会議後の記者会見で、英国の離脱問題について、同国のメイ首相が来年1月にも離脱交渉が開始されるとの見通しを示したことを明らかにした。

離脱交渉の開始には、英国が離脱を正式に通告することが必要になる。英政府は準備期間が必要として、年内に離脱を通告しない構えを示している。

トゥスク大統領によると、メイ首相は8日にロンドンで会談した際、年内の離脱通告は「ほぼ不可能」とした上で、加盟交渉開始は1月または2月に交渉開始の準備が整うと説明したという。英国が交渉開始の時期を具体的に示したのは初めてだ。