VW排ガス不正で加盟国に調査指示、消費者保護ルール違反の疑い=欧州委

独フォルクスワーゲン(VW)によるディーゼル車の排ガス不正問題で、欧州委員会は5日、同社の商慣行が消費者保護に関するEU指令に違反した可能性があるとして、加盟国に調査を指示したことを明らかにした。VWは規制逃れのための違法ソフトを搭載したディーゼルエンジン車のうち、米国での販売分に関しては、補償金や不正車両の買い取り費用の支払いなどで合意しているが、欧州を含む他の地域では補償に応じない方針を示している。欧州委は消費者保護の観点から各国での実態を把握したうえで、補償に応じるよう同社への圧力を強めるものとみられる。

欧州委のヨウロバ委員(法務・消費者・男女平等担当)は会見で、VWの規制逃れは消費者の権利保護に関するEU法のうち、消費者の誤認を誘発するおそれのある宣伝などの行為を禁止する「不公正商慣行指令」と、欠陥商品の交換や返金の権利などを定めた「商品販売および保証に関する指令」に抵触する可能性があると指摘。「加盟国にはEUルールに対する違反行為を厳しく取り締まる義務がある。いわゆる『ディーゼルゲート』はこれに該当するようにみえる」と述べた。

同委員はそのうえで、VWに対して一方的に「強硬な措置」を講じるつもりはないと説明。今月29日にEU各国の消費者保護当局者と対応策を協議するほか、VW幹部との会合(時期は不明)も予定していることを明らかにし、「欧州委として厳しい対応をとると明言することはできない。VWにEUルールを遵守し、何をすべきか考えてもらいたい」とつけ加えた。

VWは規制逃れのための違法ソフトを搭載した約1,100万台のディーゼル車のうち、48万台を販売した米国では、総額165億ドルを支払うことで規制当局や販売店と和解した。内訳は不正車両の買い取り費用や罰金、集団訴訟の和解金として約100億ドル、環境対応車の普及促進などの費用として47億ドル、販売店に対する賠償金が12億ドルなどとなっている。欧州では不正車両の8割近い約850万台が販売されており、仮にVWが米国並みの補償支払いに応じた場合、同社の財務状況に深刻な影響が及ぶことになる。

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