EUと米国が年内の合意を目指す大西洋貿易投資連携協定(TTIP)をめぐり、イタリアやスペインなどEU12カ国の貿易担当相が14日、欧州委員会のマルムストロム委員(通商担当)に連名で書簡を送り、交渉継続に支持を表明した。オバマ米大統領の任期が切れる来年1月までの妥結は困難との見方が広がるなか、12カ国は年内の合意を目指して欧州委に全面協力する意向を示している。
EUと米国は貿易と投資に関するあらゆる障壁の撤廃を目指して2013年7月にTTIP交渉を開始したが、投資家保護の仕組み、食品や自動車などの安全基準、環境保護や個人情報保護などに関連した規制の調和などをめぐって交渉が難航している。また、TTIP推進派の英国がEU離脱を決める一方、来年に大統領選挙と総選挙を控えたフランスとドイツでは協定に反対する声が高まっており、11月に迫った米大統領選とともに交渉の推進力を奪っている。
マルムストロム委員に宛てた書簡には、イタリアとスペインのほか、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ポルトガル、アイルランド、チェコ、ラトビア、エストニア、リトアニアと英国の貿易担当相が署名。12カ国はTTIPについて、新たな通商ルールを方向づけるものであり、この機会を逃がしてはならないと強調。交渉継続への期待を表明し、年内の合意を目指して欧州委と緊密に連携していく姿勢を示している。
TTIP交渉をめぐっては、ドイツのガブリエル経済相が8月末に公共テレビZDFとのインタビューで、EU側が米国の一部要求を拒否したため、「米国との交渉は事実上、決裂した」と発言。フランスのオランド大統領も米国との交渉は行き詰っており、年内合意は「極めて厳しい」との認識を示すなど、交渉の先行きに暗雲が漂っている。
欧州委と米通商代表部(USTR)による次回の交渉会合は、10月上旬にニューヨークで開かれることになっている。