欧州委員会のバローゾ前委員長が米ゴールドマン・サックスの重職に就いたことが、EUで大きな波紋を広げている。EUの倫理規定に抵触する疑いが浮上しているためで、ユンケル欧州委員長は同問題の調査に乗り出すことを明らかにした。
元ポルトガル首相のバローゾ氏は、2004年から14年にかけて欧州委員長を務めた人物。ゴールドマン・サックスは7月、英ロンドンを本拠とする国際部門ゴールドマン・サックス・インターナショナルの会長に就任すると同時に、海外事業の顧問となる人事を発表した。英国のEU離脱が業務に及ぼす影響などについて助言を得るのが目的と説明していた。
EUには欧州委員が退任してから18カ月は民間企業に入ることを禁止する規定がある。欧州委は当初、バローゾ氏はこれに反していないため、転身を問題視していなかった。ところが、欧州オンブズマン(EUの行政監査官)のエミリー・オライリー氏は9月初め、前欧州委員長としてEUに影響力があり、情報を入手できる立場にある同氏のゴールドマン入りには倫理規定に抵触する恐れがあるとして、同問題を調査するよう書簡で求めた。
ユンケル委員長は11日に公表された返信で、バローゾ氏が欧州委で「前委員長ではなく、ロビイストとして扱われることになる」とした上で、欧州委が外部の有識者からなる特別倫理委員会を設立し、倫理的な問題がないかどうかを検証する意向を表明。バローゾ氏に新たな職務や契約条件についての説明を求めていることを明らかにした。