ドイツのメルケル首相は6日、難航している米国との環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)について、妥結の可能性が残されている限り交渉を継続すべきだとの考えを示した。EU加盟国は先月下旬に開いた非公式の貿易担当相会議で、オバマ米大統領の任期が切れる来年1月までに妥結させるのは「非現実的」との認識で一致。目標としていたオバマ政権下での合意を事実上、断念した形になっている。
EUと米国は貿易と投資に関するあらゆる障壁の撤廃を目指して2013年7月にTTIP交渉を開始したが、投資家保護の仕組み、食品や自動車などの安全基準、環境保護や個人情報保護などに関連した規制の調和などをめぐって交渉が難航している。EUと米国は年内の合意を目指して協議を重ねていたが、ドイツのガブリエル経済相が8月末に公共テレビZDFとのインタビューで、「米国との交渉は事実上、決裂した」と発言したのをきっかけに、協定に反対する加盟国の間で交渉の棚上げ論が強まり、オバマ政権下での合意を断念する方向に傾いた。
メルケル首相はドイツ卸売・貿易業連合会(BGA)の会合で講演し、ドイツ、フランス、オーストリア、ルクセンブルクでは特にTTIP懐疑論が根強いものの、他のEU加盟国では「大きく事情が異なる」と指摘。環境政策をはじめとする規制の調和などでEUが譲歩することはないと強調したうえで、「EUにとって望ましい形で協定が発効すればグローバル化の歴史に新たな章が加わる。現在も交渉は続いており、可能性がある限り継続すべきだ」と述べた。