EU内の若者に鉄道周遊券を無料で提供する――このような案がEUで浮上している。英国のEU離脱決定で欧州統合の理念が揺らぐ中、未来を担う若者に域内を旅行して見聞を広め、EUへの理解を深めてもらうという意図があるが、巨額のコストが生じることから、欧州委員会は慎重に検討を進める方針だ。
この構想は、EU加盟国の若者が18歳を迎えた時に、欧州各国の鉄道を乗り放題で利用できる「インターレイルパス」の1カ月有効パスを無料で渡すというもの。欧州議会の左派系議員を中心に提唱されている。
欧州議会のブルツ委員(運輸担当)は4日、欧州議会の動きを歓迎し、欧州委が実現に向けた具体策を検討する意向を表明した。
インターレイルパスは欧州市民を対象とした鉄道周遊券。毎年30万人以上が利用している。26歳未満の若者向けの1カ月有効パスは479ユーロだ。EUでは毎年、18歳となる人が約500万人に達することから、同構想の実現には数十億ユーロが必要となる。鉄道会社の協力も必要となる。
このため欧州委は制度設計に際して、対象者全員への周遊券交付を断念し、抽選方式にするといった案も検討するとしている。