アイルランドがアップル優遇策めぐり提訴、追徴による企業流出を懸念

アイルランド政府は9日、同国が米アップルに適用していた税優遇措置を違法な国家補助と認定し、最大130億ユーロに上る追徴課税を命じた欧州委員会の判断を不服として、EU司法裁判所の一般裁判所に提訴した。アイルランドはEU加盟国の中で法人税率が最も低く、多くの多国籍企業が同国に拠点を置いている。欧州委の命令に従って追徴課税を行った場合、同様の措置が取られることを恐れる企業の海外移転が相次ぎ、同国への投資が縮小するとの判断から提訴に踏み切ったものとみられる。

アイルランド財務省は「一般裁判所に訴状を提出した。アイルランド政府の見解はアップルをめぐる欧州委の分析と大きく異なる」との声明を発表した。また、ヌーナン財務相は8日に開かれた欧州議会・経済金融委員会で、「アップルはアイルランドで支払うべき税金をすべて納めている」と強調。同社に対する税務上の優遇措置を違法とした欧州委の判断を受け入れることはできないと述べていた。

問題となっているのは、アイルランドの税務当局が2003年から14年にかけてアップルに適用していた優遇措置。同国の法人税率はEU加盟国で最も低い12.5%だが、アップルは現地子会社が製品を仕入れ、世界各地に販売した形にして米国以外の利益がアイルランドに集中するよう会計処理を行い、税負担を軽減していた。欧州委によると、同社に適用された実際の税率は03年の1%から14年には0.005%まで引き下げられていた。同委は一連の調査結果に基づき、8月末にアイルランドに対してアップルへの追徴課税を命じた。

欧州委は一部の加盟国が誘致や雇用創出の見返りに、特定の企業に適用している税優遇措置がEUの国家補助規定に違反している可能性があるとして、2014年6月に本格調査を開始した。このうち米大手コーヒーチェーンのスターバックスと欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズの金融子会社に対する優遇措置に関しては、昨年10月に違法な国家補助と認定。同措置を適用していたオランダとルクセンブルクに対し、最大3,000万ユーロの追徴課税を命じている。

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