ユーロ圏で物価の安定が進んでいる。EU統計局ユーロスタットが11月30日発表した同月の消費者物価統計(速報値)によると、ユーロ圏のインフレ率は前年同月比0.6%で、前月の0.5%から拡大。14年4月以来31カ月ぶりの高水準となった。ただ、欧州中央銀行(ECB)が重視する基礎インフレ率は横ばい状態が続いており、市場ではECBが12月に量的金融緩和の延長を決めるとの見方が大勢だ。
物価上昇は原油安に歯止めがかかっているのが主因。エネルギー価格の下げ幅は1.1%と、前年前月の7.3%から大きく縮小した。生鮮食品が値上がりし、食品・アルコール・たばこの価格が0.7%上昇し、伸び率が前月から0.3ポイント拡大したことも反映された。
ただ、工業製品とサービスの上昇率はそれぞれ0.3%、1.1%となり、4カ月連続で横ばい。価格変動が激しいエネルギー、食品・アルコール・たばこを除いた基礎インフレ率は4カ月連続で0.8%にとどまった。
ECBはユーロ圏のインフレ率を2%程度まで引き上げることを目指し、国債などを買い取る量的金融緩和を実施している。ドラギ総裁は10月の定例政策理事会後の記者会見で、同措置を期限となっている2017年3月以降も継続するかどうかを12月の理事会で判断する意向を表明していた。
インフレ率は上昇傾向にあるもの、なお同目標にはほど遠く、基礎インフレ率も足踏み状態となっていることから、アナリストらは12月8日に開く次回の理事会で量的緩和延長が決まるとの見方で一致している。