欧州議会、EU加盟国と欧州委員会は8日、企業が有価証券を発行する際に投資家に提示する目論見書に関する規制を緩和する法案の内容で合意した。中小企業を対象に目論見書の作成義務などを緩和して、株式や社債発行による資金調達を後押しする。欧州議会と閣僚理事会の正式な承認を経て新ルールを導入する。
EUでは2005年に発効した「目論見書指令」に基づき、企業がEU域内で株式や社債を発行する際に作成する目論見書の共通ルールが定められている。域内資本市場を活性化して企業が資金調達しやすい環境を整える「資本市場同盟」構想の一環として、欧州委が昨年11月に現行指令の改正案を提示。欧州議会と閣僚理事会で検討が進められていた。
目論見書ルールの改正は、要件の緩和や手続きの簡素化により、目論見書を作成するためのコストや手間を削減するのが狙い。中小企業支援策として、株式や社債の発行規模が10万ユーロ未満の場合は目論見書を不要とする現行ルールを緩和し、発行規模の上限を100万ユーロに引き上げる。また、企業が国内だけで資金調達を行う場合、加盟国が独自の判断で設定できる作成義務免除の条件に関しても、株式や社債の発行規模の上限を現在の500万ユーロから800万ユーロに引き上げる。
改正案にはこのほか◇頻繁に株式や社債を発行する企業は「ユニバーサル・レジストレーション・ドキュメント(URD)」と呼ばれる年次の企業情報開示文書を定期的に更新することを条件に、新たな発行が申請から5日以内(現在は10日以内)に認可されるようにする◇投資家の便宜向上のため、欧州証券監督機構(ESMA)がEU内で認可されたすべての目論見書を開示するウェブサイトを開設する――などが盛り込まれている。