米マクドナルドは8日、海外事業の納税地をルクセンブルクから英国に移す方針を明らかにした。ルクセンブルクがマクドナルドに適用した税優遇措置がEU法に違反する疑いがあるとして、欧州委員会が調査を進めていることや、EU離脱を決めた英国が法人税の引き下げを計画していることが背景にあるとみられる。
マクドナルドは海外メディアの報道を認めるかたちで納税地の移転計画を明らかにした。それによると、英国に持ち株会社を設立し、フランチャイズ店から支払われるロイヤルティ(ブランドや商標、情報システムなどの使用料)収入など、米国以外の事業で得た利益の大半を管理。英国に法人税を納める。移転の時期は明らかにしていないが、海外事業の統括本部を置くルクセンブルクには国内の店舗管理機能のみを残す。また、スイスのジュネーブにある事業所は閉鎖する。
マクドナルドは英国を新たな拠点に選んだ理由として「ロンドンで国際事業に携わるスタッフの数、言語、他の市場とのつながり」を挙げ、今後EU離脱交渉が進展してもこうした優位性が損なわれることはないと説明している。
英国は法人税率を現在の20%から17年4月に19%、20年には17%まで引き下げる計画を打ち出している。英首相府の報道官はマクドナルドの決定を受け、「世界各地の企業による英国への継続的な投資、とりわけ成長と新たな雇用創出が見込まれる企業からの投資を歓迎する」とコメントした。
欧州委は多国籍企業による課税逃れの取り締まりを強化しており、昨年12月にマクドナルドに対するルクセンブルクの税優遇措置について本格調査を開始した。欧州委によると、マクドナルドは欧州とロシアのフランチャイズ店から徴収したブランド使用料やレシピなどに関わるロイヤルティをルクセンブルクの現地法人に集めた後、米国支社に移転していたが、ルクセンブルクの税務当局は2009年以降、実際には米国でこの利益が課税対象になっていないことを知りながら、利益移転を認めることで自国での課税を免除する優遇措置を提供していた。マクドナルドは13年に欧州のフランチャイズ店から2億5,000万ユーロ超の利益を得ていたが、ルクセンブルクへの納税額はゼロだったとされ、労働組合や消費者団体などは同社が09~13年に欧州で10億ユーロを超える税金の支払いを免れていたと批判している。