欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2017/1/9

西欧

伊3位銀行の増資失敗、政府が救済を決定

この記事の要約

伊大手銀行バンカ・モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(BMPS)は12月22日、経営健全化の柱として計画していた増資が失敗に終わったと発表した。これを受けて伊政府は23日、同行への公的支援を決定。BMPSは即座に支援を申 […]

伊大手銀行バンカ・モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(BMPS)は12月22日、経営健全化の柱として計画していた増資が失敗に終わったと発表した。これを受けて伊政府は23日、同行への公的支援を決定。BMPSは即座に支援を申請した。

国内3位銀行のBMPSは経営を圧迫する不良債権を処理するため、7月に50億ユーロの増資を発表。欧州中央銀行(ECB)から12月末までに完了するよう求められていた。

同行は増資を新株発行だけで完了させるのが難しいことから、債務の証券化も合わせて実施することを決定。証券化には約20億ユーロの応募があったが、なお増資で30億ユーロを調達する必要に迫られていた。しかし、レンツィ首相の辞任によって政局が不透明になったことで、機関投資家が引き受けを渋り、目標額を調達することができなかった。

イタリアではBMPS以外の銀行も長引く不況の影響で経営が悪化しており、不良債権は総額3,560億ユーロに上る。政府はBMPSの増資が不調に終わると、金融システム全体に信用不安が広がりかねないことから、ジェンティローニ首相が19日、最大200億ユーロの公的資金を銀行救済に投じる意向を表明。議会は21日に同計画を承認していた。政府はBMPSが増資に失敗し、自力再建が不可能となったことから、23日未明にBMPS救済を閣議決定した。

政府はBMPSに公的資金注入、債務保証の形で支援を行う。ただ、EUでは銀行の公的救済に際して、まず債権者に負担させることを義務付ける「ベイルイン」制度が導入されているため、大きな痛みが伴う。政府は約4万人に上るとされる個人投資家に損失が生じ、政権への批判が強まることから、劣後債を持つ小口の投資家を保護する方針を決定。これらの投資家が保有する劣後債を保護対象となる同額のシニア債と交換できるようにすることを決めた。

一方、イタリア中央銀行は29日、BMPSに対する公的支援が総額66億ユーロに上るとの見通しを示した。欧州中央銀行(ECB)が同行の資本が88億ユーロ不足していると指摘したことを受けたもの。これによって公的支援は当初に想定していた50億ユーロから膨らむことになる。

BMPSはECBがEU主要銀行を対象に実施した2016年のストレステスト(健全性審査)の結果に基づき、50億ユーロの増資を決めた。しかし、ECBは11月末から12月21日にかけて同行の財務が預金流出などによって一段と悪化したと判断。BMPSは26日、ECBから資本不足が50億ユーロを上回る88億ユーロに上ると指摘されたことを明らかにした。

伊中銀は資本増強に46億ユーロ、小口投資家の損失補てんに20億ユーロが必要と見積もっている。計66億ユーロという額はECBが示した88億ユーロを下回るが、残る22億ユーロは保護対象としない劣後債を持つ機関投資家が損失を負担する形でカバーする。