欧州自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)は11日、違法なソフトウエアを用いて車両の排ガスを操作していた問題で、同社が有罪を認め、総額43億ドルの罰金・民事制裁金を支払うことで米司法省と合意したと発表した。これにより米国での刑法上の財務リスク負担が明確化した。同国における排ガス不正の民事訴訟ではすでに和解合意が成立していることから、同問題に絡んで米国で新たに大きな財務負担が発生する可能性はほぼなくなった。ただ、司法省は同日、VW幹部6人の起訴を明らかにしており、当局は社員・役員個人の刑事責任については今後も追及していく考えだ。
今回合意した43億ドルの罰金などは、自動車メーカーが米政府に支払うものとしては過去最大。内訳は28億ドルが刑事上の罰金で、残り15億ドルは民事制裁金が占める。VWはこのほか、法令を遵守しているかどうかをチェックする独立機関の監督を3年間にわたって受けることも受け入れた。
同社は排ガス不正問題に絡んで、これまでに引当金を182億ユーロ計上した。今回の合意により引当金が足りなくなるため、新たに積み増すことになる。
米司法省は、すでに逮捕しているVW幹部1人に加え、新たに5人を起訴したことを明らかにした。同省のロレッタ・リンチ長官は「この犯罪を指揮した責任者を引き続き追及する」と発言。サリー・イエーツ副長官は「犯罪を行ったのは顔を持たない多国籍企業ではなく、血肉を持った人間だ」として、VWとの司法取引と社員・役員個人の責任は別であることを強調した。
起訴された6人には、排ガス不正問題が発覚する2015年9月までVWブランドで開発担当取締役を務めてきたハインツヤコブ・ノイサー氏が含まれる。
VWグループのマルティン・ヴィンターコルン前社長や現在の役員は起訴されていない。だが、排ガス不正の事実を発覚以前に把握していたことが今後の捜査で明らかになれば、適時開示義務に違反していたことになり、株主損賠訴訟で同社は難しい状況に追い込まれることになる。