欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2017/1/30

EU情報

英のEU離脱通告は議会承認が必要、英最高裁が判決

この記事の要約

英国の最高裁判所は24日、英政府はEUへの離脱通告に際して、事前に議会の承認を得なければならないとする判決を下した。メイ首相は3月末までに離脱を通告し、EUと離脱交渉を開始する方針を打ち出しているが、議会の承認が必要とな […]

英国の最高裁判所は24日、英政府はEUへの離脱通告に際して、事前に議会の承認を得なければならないとする判決を下した。メイ首相は3月末までに離脱を通告し、EUと離脱交渉を開始する方針を打ち出しているが、議会の承認が必要となったことでスケジュールが遅れる可能性が出てきた。

英国とEUの離脱交渉は、英政府が離脱を正式に通告してから開始される。メイ首相は通告について、議会の承認を取り付けることなく、政府が委任されている「国王大権」を行使する形で実施する意向を表明したが、6月の国民投票でEU残留派だった市民の一部が、議会承認が必要になるとして提訴。英国の高等法院(高等裁判所)は11月、原告の主張を認める判決を下した。政府はこれを不服とし、上訴していた。

最高裁はEU離脱には国内法の改正が伴うことから、離脱通告に議会が関与する必要があるとして、高裁判決を支持し、政府の訴えを退けた。

予定通り3月末までに離脱を通告することを目指す英政府は26日、離脱通告の承認に向けた法案を国会に提出。下院では31日に審議入りし、2月8日に採決する予定だ。その後に法案は上院に回され、審議される。

下院ではEU離脱の是非を問う国民投票を実施した際、離脱反対派が多数を占めていた。上院ではメイ首相率いる与党・保守党が過半数を下回っている。首相が17日、離脱に伴ってEU単一市場からも撤退する意向を表明したことに対する野党の反発も強い。それでも、議員の多くはEU離脱が国民投票で決まったことを尊重し、離脱そのものに反対する風潮は弱まっている。下院は12月、政府がEUへの離脱通告に先立って離脱交渉の方針を公表することを条件に、3月末までの通告を支持する動議を賛成多数で可決した。メイ首相がEU離脱に関する政府の基本方針を示した際、EUとの離脱交渉での合意について議会による承認を求める方針を打ち出したこともあり、離脱通告が承認されない可能性は低いとみられる。

ただ、関連法案がすんなり可決されるかどうかは不透明。野党の労働党とスコットランド民族党が、政府が提出する法案の修正を求める意向を表明しているためで、審議が長引けば離脱通告が遅れる可能性はある。労働党のコービン党首は24日、離脱通告承認の条件として、議会が離脱交渉に関与し、節目ごとに議会の承認が必要となる制度を導入するよう求める方針を示した。

一方、最高裁は今回の判決で、スコットランドと北アイルランド、ウェールズの議会は、外交問題である離脱通告に関与できないと認定した。これを受けてEU離脱に反発するスコットランド自治政府のスタージョン首相は同日、英国からの独立の是非を問う住民投票を再実施する可能性が強まったと述べた。