英政府、EU離脱の白書公表

英政府は2日、EU離脱に関する方針を示す白書を公表した。EU単一市場からの撤退など、メイ首相が1月に打ち出した基本方針に肉付けしたものだが、詳細は明らかにしておらず、野党から批判の声が挙がっている。

メイ首相は1月中旬に行った演説で、EU離脱に関する政府の基本方針を発表した。しかし、政府はEUに離脱を正式に通告する前に議会の承認を得なければならないとする判決を最高裁判所が下し、離脱通告に議会の承認が必要となったことから、議会の要求に応じて、より具体的な戦略を示す白書の公表を迫られた。

75ページに及ぶ白書は、◇単一市場から撤退する代わりにEUと包括的な自由貿易協定(FTA)を締結する◇EUからの移民を制限する◇離脱交渉妥結後に一定の移行期間を設けることをEUに提案する◇欧州司法裁判所の管轄から外れたり、EU予算の拠出中止など主権回復を優先する◇防衛、外交などでEUとの協力を継続する――など、首相が示した方針を改めて確認。各項目について説明を加えた。

移民制限に関しては、移民労働者を必要としている企業や業種に配慮し、段階的に実施する意向を表明。離脱後に生じるEUとの通商紛争を解決するための新機関の創設をEUに提案することを明らかにした。

ただ、大きな焦点のFTAについて「相互の利益」になるような協定を目指すと述べるにとどまるなど、全体的に踏み込んだ内容とはなっておらず、野党は「行動計画ではなく、願い事のリストだ」(労働党)、「中身のない決まり文句」(自由民主党)といった批判を浴びせている。

一方、英下院は1日、政府にEU離脱通告の権限を与える法案をめぐり、審議を進めることを認める法案を賛成多数で可決した。法案は今後、下院の委員会、上院で審議される。政府は3月上旬の成立を目指しているが、与党が過半数を割り込んでいる上院で修正を求められる可能性もある。

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