欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/16

総合 – 欧州経済ニュース

ESMの銀行直接支援、枠組みで最終合意

この記事の要約

ユーロ圏18カ国は11日、EUの金融安全網である「欧州安定メカニズム(ESM)」が資本不足に陥ったユーロ圏の銀行を直接支援できるようにする制度の枠組みで最終合意した。当該銀行の債務の8%を債権者が免除することなどが条件と […]

ユーロ圏18カ国は11日、EUの金融安全網である「欧州安定メカニズム(ESM)」が資本不足に陥ったユーロ圏の銀行を直接支援できるようにする制度の枠組みで最終合意した。当該銀行の債務の8%を債権者が免除することなどが条件となる。

ESMは債務危機が深刻化し、独自に資金調達できなくなったユーロ参加国に緊急融資を行う常設の金融安全網として発足した。当初は資金繰りに行き詰った銀行への支援を想定しておらず、スペイン、アイルランドの金融システムが危機に陥った際は政府に銀行救済に必要な資金を提供する形で支援を行った。

しかし、同方式では対象国の債務が膨らみ、さらなる金融支援の要請を招くという悪循環に陥ることから、EUは2012年、ユーロ圏の銀行監督を欧州中央銀行(ECB)に一元化することを条件に、ESMが銀行に資本を直接注入できるようにすることで合意していた。

直接支援をめぐっては、ESMが備える融資能力5,000億ユーロのうち、銀行支援に回すことができる額は600億ユーロを上限とし、銀行が市場で資金を調達することができず、対象国に支援の余力がない場合の最終手段として実施することなどで合意済みだった。今回は新たに債権者に一定の負担を強いることも条件に加えた。同合意により、ESMは銀行監督の一元化制度が始動する11月以降に、銀行への直接支援が可能となる。

EUでは銀行の破綻処理を一元化する制度に基づき、総額550億ユーロの「単一破綻処理基金(SRF)」の創設が決定している。同基金は経営に行き詰まり、救済することが決まった銀行に資本を注入するが、運用開始は16年1月となるため、それまでに支援が必要な事態が生じた際はESMの活用が選択肢のひとつとなる。