欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/23

総合 – 欧州経済ニュース

加盟国が「親・子会社指令」改正案で合意、多国籍企業の二重非課税を防止

この記事の要約

EU加盟国は20日開いた財務相理事会で、グローバル企業による課税逃れの防止を目的とする「親・子会社に関する指令」の改正案を全会一致で承認した。加盟国は新ルールに沿って2015年末までに国内法を整備しなければならない。 1 […]

EU加盟国は20日開いた財務相理事会で、グローバル企業による課税逃れの防止を目的とする「親・子会社に関する指令」の改正案を全会一致で承認した。加盟国は新ルールに沿って2015年末までに国内法を整備しなければならない。

1990年に制定された親・子会社指令はEU域内の複数の国に拠点を置く企業に対する二重課税を防止するための法律で、ある国の子会社が域内の他の国に拠点を置く親会社に支払う配当や利益配分に対する課税を免除することなどを定めている。しかし、一部の企業はこうしたルールや国による税制の違いを悪用して、いずれの国でも課税されない「二重非課税」の状態に置かれている。欧州委はこうした法の抜け穴をふさいで企業の租税回避を防ぐため、昨年11月に現行指令の改正案をまとめた。

現行ルールでは域内の他の国に拠点を置く子会社から親会社が受け取る配当は非課税となるが、一部の国では親会社への支払いを課税控除が可能な「債務の返済」として取り扱うケースがあり、この場合は支払国と受取国の双方で課税が免除されることになる。欧州委はこうした「ハイブリッドローン」と呼ばれる金融商品(支払国側では債務として損金算入され、受取国側では配当として税控除を受けられる金融商品)について、今後は子会社の所在国で税控除となる場合は、親会社が拠点を置く国で確実に課税する制度が導入される。

改正案にはこのほか、もっぱら租税回避の目的で域内にペーパーカンパニーを設立する際などに適用される親・子会社指令の新たな乱用防止規定が盛り込まれている。このため低税率を武器に、国外からの企業誘致を図ってきたマルタやルクセンブルクなどは改正案に反対していたが、最終的に税制改正に必要な全会一致の合意にこぎつけた。

グローバル企業による課税逃れに対して国際的な批判が高まるなか、欧州委は今月11日、アイルランド、オランダ、ルクセンブルクが企業誘致を目的に導入している税制上の優遇措置について本格調査を開始した。米アップルやスターバックスなどに適用されている優遇税制が、特定の企業に対する資金支援を厳しく制限したEUの国家補助規定に違反している可能性があるため。EU内では米国に本社を置く多国籍企業が収益に応じた税金を納めていないとの批判が高まっており、調査は3カ国以外に及ぶ可能性もある。