欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/16

総合 – 欧州経済ニュース

ブルガリアが「サウスストリーム」建設を凍結、EUと米の要求に対応

この記事の要約

ブルガリアのオレシャルスキ首相は8日、ロシアからウクライナを迂回して欧州諸国に天然ガスを輸送するパイプライン「サウスストリーム」の建設計画を一時凍結する方針を明らかにした。ロシアの国営ガス会社ガスプロムが主導する同プロジ […]

ブルガリアのオレシャルスキ首相は8日、ロシアからウクライナを迂回して欧州諸国に天然ガスを輸送するパイプライン「サウスストリーム」の建設計画を一時凍結する方針を明らかにした。ロシアの国営ガス会社ガスプロムが主導する同プロジェクトをめぐっては、欧州委員会が今月3日、エネルギーの生産・供給事業と輸送事業の分離を定めたEUルールに違反する可能性があるとして、ブルガリア政府に計画の中断と詳細情報の提供を求めていた。

サウスストリームはロシア南西部からウクライナを迂回して黒海海底を通り、ブルガリアを経由してイタリアやオーストリアに至るガスパイプライン。ロシアと欧州側の関係国は2009年にパイプライン建設の合意書に署名しており、2016年の稼働を目指している。ブルガリアでは6月中の着工が見込まれていた。

しかし、欧州議会は4月半ば、ロシアによるクリミア編入に抗議して、サウスストリーム計画の撤回を求める決議を採択。欧州委はロシア側との決定的な対立を避けるため、エネルギー市場の自由化を目的とする「第3次エネルギーパッケージ」の柱の1つで、電力・ガス生産を手掛ける大手企業による輸送網の保有・運営を厳しく制限した規定との整合性を理由に、ブルガリアに対して計画の一時凍結を要請した。

一方、サウスストリーム計画をめぐっては、米国もウクライナ情勢との関連でブルガリア政府への圧力を強めている。ブルガリア国内のパイプライン建設を受注したストロイトランスガスを率いるロシアの大物実業家ゲンナディ・ティムチェンコ氏が、米政府による制裁対象に含まれているためだ。8日にはジョン・マケイン上院議員をはじめとする議員団がオレシャルスキ首相と会談し、ストロイトランスガスとの契約を見直すよう強く迫っていた。

オレシャルスキ首相は米議員団との会談後、記者団に対し「パイプライン建設に関するすべての作業を中断するよう指示した。欧州委と協議して今後の対応を決める」と述べた。一方、ストイネフ・エネルギー相は国営ラジオとのインタビューで、「戦略的に今の状況をみれば、サウスストリーム計画を撤回することは不可能であり、欧州とブルガリアにとって重要なプロジェクトだ。保留になっている問題はすべて解決できると確信している」と述べ、プロジェクトの継続に自信を示した。