欧州議会がEU-ETS改革案を可決、議長国とMSRの規模拡大など協議へ

欧州議会は15日、EU排出量取引制度(EU-ETS)第4フェーズ(2021~30年)に向けた制度改革案を賛成多数で可決した。30年を達成期限とするETS対象部門の削減目標を達成するため、対象施設に割り当てる年間排出量の上限を、21年以降は毎年2.2%削減することなどを柱とする内容。改革案には欧州議会の独自提案も含まれているため、EU議長国マルタと協議して最終案をまとめ、改めて本会議で採決を行う。

欧州委員会が15年7月に発表した制度改革案によると、第4フェーズではETS対象部門からの排出量を30年までに05年比で43%削減するとの目標を達成するため、対象施設の割当総量の削減率を、現在の年1.74%から21年以降は2.2%に引き上げる。達成状況を見極めて、早ければ24年以降、削減率を年2.4%に引き上げることも提案に盛り込まれている。

一方、排出枠の需給バランスを改善して排出権価格を下支えするため、19年1月から「市場安定化準備(MSR)制度」が導入される。これは余剰排出枠を一旦リザーブしておき、需給がひっ迫した場面で取り崩して排出権価格を安定させる仕組み。本会議ではMSRの規模を当初の構想の2倍に拡大し、余剰排出枠の最大24%を吸収できるようにする修正案が採択された。

制度改革案にはこのほか◇排出枠を割り当てるためのオークションの収益を利用して「近代化ファンド」を創設し、EU加盟国のうち最も所得水準の低い10カ国のエネルギー部門の近代化を支援する◇同じくオークションの収益で「移行支援ファンド」を創設し、脱炭素化に対応するための人材育成や配置転換を支援する◇航空部門に対する排出割当を14-16年の平均と比べて10%削減する―などが盛り込まれている。

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