不良債権問題などで経営が悪化している伊最大手銀行のウニクレディトは23日、財務改善のため実施した130億ユーロの株主割当増資が成功したと発表した。これによって経営健全化に向けて大きく前進したことになる。一方、状況がより深刻な3位銀行バンカ・モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(BMPS)は、伊政府による救済をめぐる調整が難航しており、明暗が分かれている。
ウニクレディトは昨年12月中旬、景気低迷や不良債権で悪化している財務の改善に向けた経営健全化計画を発表。全従業員の約1割に相当する1万4,000人の削減、944支店の閉鎖とともに、130億ユーロの増資を行う方針を打ち出していた。6日に開始された株主割当増資では、これまでに発行する新株の応募率が99.8%に達し、目標額をほぼ確保した。
同行は2016年12月通期に118億ユーロの純損失を計上し、前期の黒字(17億ユーロ)から赤字に転落した。不良債権処理に伴う122億ユーロの損失が響き、赤字が過去最大規模に膨らんだ。増資で調達した資金で、財務が改善することになる。
一方、BMPSは不良債権を処理するため、昨年7月に50億ユーロの増資を発表。欧州中央銀行(ECB)から12月末までに完了するよう求められていた。しかし、増資が失敗に終わり、伊政府は12月23日に公的支援を決定した。
政府は公的資金注入、債務保証の形で支援を行う。EUでは銀行の公的救済に際して、まず債権者に負担させることを義務付ける「ベイルイン」制度が導入されているため、投資家に損失が生じるが、政府は約4万人に上るとされる個人投資家を保護するため、劣後債を持つ小口の投資家を保護する方針を打ち出している。
この救済はEUとECBの承認が必要となる。しかし、23日付の英フィナンシャル・タイムズによると、欧州委員会とECBの間で支援額などをめぐる意見の相違があり、調整が遅れており、承認まで数カ月を要するとの見方が出ている。