欧州議会は5日の本会議で、医療機器および体外診断用医療機器の安全性向上を目的とする2つの規則案を賛成多数で可決した。医療機器メーカーに対する検査体制の強化や、域内で販売される医療機器がEUの定める安全性や性能の基準に適合していることを示す「CEマーク」の適合性評価を行う第3者認証機関(Notified Body)に対する監視強化などを柱とする内容。EU加盟国はすでに規制案を承認しており、医療機器に関する規則は3年、体外診断用医療機器に関する規則は5年の移行期間を経て新ルールが導入される。
医療機器の製造・販売にあたり、公的機関の審査を受けて国の承認を得なければならない日本や米国などと異なり、EUではメーカー自身または加盟国が指定した認証機関が所定の適合性評価を行い、安全性や性能などの基準を満たせば製品にCEマークを表示して、域内全域で販売できる仕組みになっている。しかし、2010年にシリコン豊胸バッグ分野で当時世界3位だった仏ポリ・アンプラン・プロテーズ(PIP)社が、医療用ではなく、未認可の安価な工業用ジェルを用いてシリコンバッグを製造していたことが発覚した問題を受け、欧州委員会が12年に規制強化策として「医療機器包括案」を発表。欧州議会とEU加盟国の間で検討が重ねられていた。
医療機器包括案は、医療機器と体外診断用医療機器(人体から抽出した唾液、血液、尿、皮膚などを測定するための機器)に関する2つの規則案から成る。規則案は現行指令をそれぞれ格上げしたもので、医療機器の安全性を確保するため、製品が市場投入された後にメーカーへの立ち入り検査を実施することや、CEマークの適合性評価を行う第3者認証機関に対する監視の強化を柱とする内容。
規則案にはこのほか◇体内に埋め込まれるインプラントなど人体に与えるリスクが高い機器に関しては、第3者認証機関に加え、高度な知識を持つ専門家で構成する特別委員会が安全性をチェックする◇「インプラントカード」を発行して製品のトレーサビリティを高める◇リスクの高い機器についてはメーカーに対し、製品の性能と安全性を裏づけるクリニカルエビデンスの提供を義務付ける――などが盛り込まれている。