EU加盟国は23日開いた教育・文化・青少年・スポーツ担当相理事会で、2010年に制定された「視聴覚メディアサービス指令」改正案の内容で合意した。技術の進化や市場環境の変化に対応して欧州メディア産業の競争力を維持しながら、マイノリティの権利保護、文化的多様性、消費者保護を図ることが法案の狙いで、ヘイトスピーチなど有害コンテンツの拡散防止を目的としたソーシャルメディアや動画配信事業者に対する規制強化などを柱とする内容。加盟国、欧州議会、欧州委員会の代表による3者協議で最終案をまとめ、早期の新ルール導入を目指す。
改正案によると、フェイスブックやツイッターをはじめとするソーシャルメディアやユーチューブなどの動画共有サイトは、暴力や憎悪をあおったり、テロや暴動を扇動するような動画をプラットフォームからは排除するための対策を講じなければならない。具体的にはユーザーが簡単な手順で有害コンテンツを通報できるシステムを導入し、報告を受けてどのような措置を講じたかレポートすることが義務付けられる。ただし、規制の対象となるのはプラットフォーム上に保存された動画で、ライブ動画をストリーミング配信する「Facebook Live」などのサービスは対象から除外される。
欧州では難民危機やテロの脅威を背景に、インターネット上で人種差別や外国人排斥を扇動するヘイトスピーチが横行している。ソーシャルメディアなどを利用したテロ組織によるプロパガンダへの対応も急務になっている。フェイスブック、ツイッター、マイクロソフト、ユーチューブは昨年5月、EUとヘイトスピーチ対策で合意。ヘイトスピーチの削除要請を受けた場合、原則として24時間以内に投稿内容をチェックし、自社の利用規約やEUの指針に沿って違法と判断したコンテンツを削除するか、閲覧できないようにすることなどを盛り込んだ行動規範に署名した。ただ、行動規範に法的拘束力はないため、違反企業に対する制裁を盛り込んだEUレベルの規制を求める声が高まっていた。
改正案にはこのほか、動画配信事業者に対して放送事業者と同様、欧州で制作されたコンテンツの枠を確保することを義務付けるルールが盛り込まれている。現行指令は文化の多様性を保護する目的から、欧州で制作されたテレビ番組や映画の比率を全体の20%以上とすることを域内の放送事業者に義務付けている。欧州委はオンデマンド動画配信にもテレビ放送と同じルールを適用することを提案していたが、閣僚理では欧州で制作されたコンテンツの比率を30%以上とする修正案が承認された。
さらに文化的多様性を推進する取り組みの一環として、加盟国が自国でサービス展開する動画配信事業者に対し、国内における映画やテレビ番組の制作に資金面の協力を要請できる仕組みを導入することも改正案に盛り込まれている。