欧州委員会は7日、EU予算や加盟国の拠出金で「欧州防衛基金」を創設し、研究開発や装備の調達を共同で行う新たな防衛計画を発表した。英国のEU離脱決定や欧州の防衛に消極的な米トランプ政権の誕生など、欧州の安全保証をめぐる情勢が不透明さを増すなか、EU内の防衛協力を深めるのが狙い。年内に基金を立ち上げ、2021年からは年間55億ユーロ規模に拡大することを目指す。
防衛基金にはEU予算から年15億ユーロを拠出し、残りは加盟国が分担する。年間55億ユーロの資金うち、50億ユーロを新型ヘリコプターや戦車などの共同調達とドローン(小型無人機)などの開発投資に充て、残りの5億ユーロは暗号化ソフトやロボット技術などの研究費として活用する。第1段階として、年内に共同研究費として2,500万ユーロのEU予算で基金を立ち上げ、段階的に資金規模を拡大して19年から装備の共同調達を実施する。
欧州委は基金創設の狙いについて、加盟国の財政状況が厳しいなか、各国が個別に行っている装備の調達やハイテク兵器などの開発を共同で進めることで、無駄を省いて効率的に防衛協力を推進すると共に、欧州防衛産業の競争力を強化することができると説明している。
欧州防衛基金の構想は、欧州委が昨年11月に発表した防衛行動計画にも盛り込まれており、12月のEU首脳会議で加盟国から支持が表明されていた。モゲリーニEU外交安全保障上級代表は記者会見で、「防衛と安全保障はEUが再び着手できる分野のひとつだ」と述べ、防衛基金を通じて英国のEU離脱で揺らぐ域内の協力体制を強化できるとの考えを示した。