スペインのサンタンデール銀、準大手行を救済

スペイン最大手銀行のバンコ・サンタンデールは7日、経営危機に陥った国内同業バンコ・ポピュラールを買収すると発表した。全株式を1ユーロで取得する。破綻しかねない状況にあったポピュラールを無償で買収し、救済する形となる。

ポピュラールは中小企業向け融資に強みを持つスペインの準大手銀行。同行はリーマンショックに端を発した世界金融危機で多額の不良債権を抱え込み、その後の業績も低迷しており、昨年は35億ユーロの赤字となった。

同行をめぐっては、前週に経営不安の噂が広がって預金流出が加速し、株価が一気に半分以下まで低下。欧州中央銀行(ECB)が6日発表した声明で、資金繰りに行き詰まって破綻する可能性があると指摘する事態に発展していた。

こうした状況を受けて、EUの銀行の破綻処理を担う「単一破綻処理委員会(SRB)」が対応に乗り出し、スペイン政府などと調整を進めた結果、サンタンデールによる買収で救済することが決まった。サンタンデールは増資で約70億ユーロを調達し、ポピュラールの債務処理を進める。

EUでは銀行の破綻処理を一元化する制度が2015年に発足した。経営危機に陥った域内銀行の破綻処理を公的資金に頼らず迅速、公正に進めるのが目的で、銀行監督を欧州中央銀行(ECB)に一元化する制度に加わるユーロ圏18カ国と、英国とスウェーデンを除く非ユーロ圏8カ国の計26カ国が参加している。SRBは参加国の銀行に資金繰りの行き詰まりなどの問題が生じた際に対応策を協議し、救済して再建するか閉鎖するかを決める機関だ。SRBが関与した銀行救済は、ポピュラールが初となる。

同破綻処理制度では、参加国の銀行の拠出によって運営される「単一破綻処理基金(SRF)」を活用して銀行を救済する手段があるが、今回のケースでは同基金を使わず、財務が強固な大手銀行に債務処理を委ねる形となった。スペイン政府は公的資金を投入することなく、ポピュラールの営業を継続させ、預金を保護することができる。一方、サンタンデールにとっても、不良債権を引き継ぐものの、無償でポピュラールを傘下に収め、国内とポルトガルの事業基盤を強化できるという利点がある。同救済で「ベイル・イン」と呼ばれる制度に基づき、ポピュラールの劣後債保有者が債権放棄を迫られ、約20億ユーロの損失を負担し、株主がすべてを失うことも、サンタンデールには有利となる。