伊政府が2銀行の破綻処理決定、大手銀が資産取得

イタリア政府は25日、経営が行き詰まった国内中堅銀行バンカ・ポポラーレ・ディ・ヴィチェンツァと地銀ベネト・バンカの破綻処理手続きに着手すると発表した。欧州中央銀行(ECB)から両行が経営破綻状態にあると認定されたことを受けたもので、両行の優良遺産と不良資産を切り離し、優良資産を同国銀行2位のインテサ・サンパオロが引き継ぐ。不良資産は政府が公的資金を注入して処理する。

伊北東部ベネト地方を本拠とするベネト・バンカとバンカ・ポポラーレ・ディ・ビチェンツァは、不良債権の増大などで経営が悪化。ECBから4月に64億ユーロの資本不足を指摘されて経営不安が広がり預金流出が続いている。政府は国内有数の経済中心地であるベネト地方で主に中小企業と取引している両行が破綻すると、国内の金融システム全体が動揺しかねないため、破綻回避を模索。2016年には厳しい状況にある銀行を支援する50億ユーロ規模の民間基金「アトランテ・ファンド」から35億ユーロを注入したが、経営改善が進まなかった。これを受けてECBは両行に資本増強計画を提出するよう指示したが、信頼できる解決策を示すことができなかったため、23日に両行は「破綻状態か、破綻しつつある」と宣言した。

インテサ・サンパオロは21日、ベネト・バンカとバンカ・ポポラーレ・ディ・ビチェンツァの破綻処理を支援するため、両行の優良資産を引き継ぐ「グッドバンク」を1ユーロで買収する意向を表明。これに基づいて政府は破綻処理を進めることを決め、25日に関連の緊急法令を出した。

ユーロ圏の銀行の破綻処理一元化に伴って導入された「ベイルイン」制度では、危機に直面する銀行に「単一破綻処理基金」と呼ばれる共通基金を使って資金を注入する前に、対象銀行の債権者と大口預金者に負担を迫ることが求められる。EU内の金融システム全体に影響を及ぼす恐れがない中小銀行の破綻については、共通破綻処理制度を適用せず、各国が独自に手続きを進めることができる例外規定があることから、伊政府は国内で解決する道を選んだ。これによって政府が担う不良資産処理では、単一破綻処理基金を使うことはできず、国庫から公的資金を拠出するが、この負担をできるだけ減らすためのベイルインでは、両行の劣後債保有者と株主に損失を負担させる一方で、預金者、弁済の優先順位が高いシニア債の保有者は保護され、国民の不満をある程度、吸収することができる。

イタリアでは3位銀行バンカ・モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(BMPS)の救済について、伊政府と欧州委が6月1日に基本合意したばかり。資本が88億ユーロ不足している同行に対して、政府が66億ユーロの公的資金を注入し、残る22億ユーロは保護対象とならない劣後債を持つ機関投資家が損失を負担することになっている。

一方、政府はインテサに対して、買収するグッドバンクが26日以降に業務を続けることができるようにするのを支援するため、25日に52億ユーロを支払った。さらに、将来の損失に備えて最大120億ユーロの保証を供与することも決めた。

ユーロ圏ではスペインで7日、経営危機に陥った国内準大手銀行バンコ・ポピュラールを最大手銀行のバンコ・サンタンデールが1ユーロで買収することが決まった。破綻しかねない状況にあったポピュラールを無償で買収し、救済する形となる。

買収額はインテサと同じ1ユーロだが、サンタンデールは不良債権も公的支援なしで引き受け、増資で調達する約70億ユーロで債務処理を進める。これに対してインテサは、優良資産だけを無償で手に入れ、しかも同買収がインテサの資本、株主配当に悪影響を与えないといった条件もついた「いいところ取り」で、手法は大きく異なる。

欧州委は25日に今回の破綻処理計画を承認。緊急法令は60日以内に伊議会の採決で承認を取り付ける必要がある。

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