英国の先の総選挙で惨敗し、下院で過半数を割り込んだメイ首相率いる保守党は6月26日、北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)と閣外協力で合意した。これで保守党は少数与党となりながらも、DUPと合わせて下院で過半数を確保。6月8日の選挙から2週間以上を経て、ようやく新政権が発足する。
メイ首相はEUとの離脱交渉に政権基盤を固めてから臨むため、前倒しの総選挙に踏み切った。しかし、改選前から12議席減らし、過半数の326を8議席下回る318議席に後退。10議席を持つDUPとの協力に向けた協議を進めていた。
DUPのフォスター党首と合意した閣外協力は、同党が予算やEU離脱関連などの重要法案で保守党を支持するという内容。その他の法案についてはケース・バイ・ケースで対応する。メイ首相は北アイルランドのインフラ整備、医療と教育の拡充などに2年間で10億ポンド(約1,424億円)以上の追加支出を行うことなどを約束し、協力を取り付けた。
ただ、保守党とDUPを合わせた議席数は328と、過半数を2議席上回るにとどまり、新政権の基盤は脆弱だ。また、両党はDUPが同姓婚、妊娠中絶に反対、保守党が容認など、基本的な立場で異なる点が多く、野合との批判を野党から浴びているほか、保守党内でも異論を唱える動きがある。北アイルランドへの予算優先配分には、スコットランドとウェールズの自治政府が反発している。
さらに、EU離脱問題をめぐっても、移民制限で譲歩するよりEU単一市場からの撤退を選ぶ「ハードブレグジット」(強行離脱)路線を掲げるメイ首相に対して、DUPは「ソフトブレグジット」(穏健な離脱)を支持してきた。両党は法案採決では協調するものの、その前の段階でぶつかる可能性がある。