EU加盟交渉打ち切れば「トルコの術中に」、ユンケル欧州委員長が警告

欧州委員会のユンケル委員長は8月29日、トルコのEU加盟問題に言及し、実質的に凍結状態にある加盟交渉をEU側から打ち切るべきではないとの考えを示した。一部の加盟国からは交渉の打ち切りを求める声も出ているが、ユンケル氏は交渉が暗唱に乗り上げたのは完全にトルコ側に責任があると指摘。EUから打ち切りを通告すれば、EU側に責任があることにしたい「トルコ側の術中に陥ることになる」と警告した。

ユンケル氏はブリュッセルで開いた加盟28カ国のEU大使との年次会合で、「トルコは大股でヨーロッパから遠ざかろうとしている」と発言。「エルドアン大統領はトルコではなく、EUに責任があることにするため」、EU側に交渉を打ち切らせたいと考えていると指摘し、「罠にはまってはならない」と強調した。

トルコのEU加盟交渉は2005年10月にスタートしたが、EU側はトルコ国内の少数民族クルド人に対する人権抑圧などを問題視し、交渉は長く足踏み状態が続いていた。EUは昨年3月、ギリシャに密航した不法移民らをトルコに強制送還する見返りとして、EU加盟交渉を加速させることを約束。新たに経済通貨政策などの分野で協議入りした。

しかし、エルドアン政権は昨年7月のクーデター未遂事件をきっかけに強権統治を加速させており、EUは大規模な取り締まりで多くのジャーナリスト、司法関係者、人権活動家などが逮捕されたほか、政権に批判的なメディアが相次いで閉鎖に追い込まれた事態を問題視。さらに、エルドアン氏が今年4月に実施した憲法改正の是非を問う国民投票で賛成派が過半数を占めたことを受け、死刑制度の復活を示唆したことで、EU加盟交渉は完全に停止している。

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