独複合企業ティッセンクルップとインドのタタ製鉄は20日、両社の欧州鉄鋼事業を統合することで基本合意したと発表した。欧州鉄鋼各社は過剰設備と低価格の中国製品流入を背景に業績不振が構造化していることから、両社は合弁会社を設立して組織のスリム化、コスト削減を実現し、競争力を強化する意向だ。
今後はデューデリジェンス(資産査定)を実施したうえで来年初頭に本契約を締結。その後の独禁審査を経て来年末の合併手続き完了を見込む。
両社は折半出資の合弁会社「ティッセンクルップ・タタ製鉄」をオランダに設立する。新会社は持ち株会社となり、取締役会と監査役会をあわせ持つ経営体制を採用する。ティッセンは新会社に欧州鉄鋼事業と鉄工所向けサービス事業、タタ製鉄は欧州事業をそれぞれ持ち寄る。
ティッセンクルップ・タタ製鉄は平鋼生産高が年約2,100万トン、売上高が約150億ユーロ、従業員数が約4万4,000人で、欧州ではアルセロールミタルに次ぐ2位の鉄鋼メーカーとなる。業務開始後は販売、管理、研究開発、調達、物流、サービスセンターの統合および川下工程の稼働率向上を通して年間コストを4億~6億ユーロ圧縮する。2020年からはこれとは別に生産ネットワークの最適化を検討し、さらなるコスト削減を図る。生産ネットワーク最適化のコスト削減幅については英国の欧州連合(EU)離脱交渉や排出権取引制度、各国通商政策といった政治上の不確定要素があるため現時点では数値化できないとしている。
これらの措置の実施に伴い、従業員を最大4,000人削減する。削減は管理部門で同2,000人、生産部門で同2,000人を予定。ティッセン側の削減規模は出資比率に応じて2,000人となる。
ティッセンは自動車向け、タタ製鉄は産業向け製品に強く、両社は製品面での補完性が高い。物流面でも大きなシナジー効果が見込まれる。
ティッセンは合弁設立の本契約調印後、欧州鉄鋼事業を非継続事業としてバランスシートに計上。合弁化の完了後は新会社の持ち分50%を簿価計上する。これにより財務の重要指標である自己資本比率(総資本に対する自己資本の比率)やギアリング比率(自己資本に対する他人資本の比率)を大幅に改善する考えだ。
ティッセンクルップは業績が悪化していた南北アメリカ大陸の鉄鋼事業からすでに撤退している。今回の欧州合弁合意により、大きなリスク要因となっている鉄鋼事業からの撤退にめどを付けたことになる。