欧州委員会は10日、欧州中央銀行(ECB)が先月まとめた銀行の不良債権処理に関する新たな指針案について、ユーロ圏のすべての銀行に対して一律に貸倒引当金の増額を求めるルールを適用すべきではないとの見解を明らかにした。指針案をめぐっては、欧州議会やイタリアなどから「厳しすぎる」といった批判が出ている。欧州委が厳格なルールの導入に難色を示したことで、ECBは指針案の見直しを迫られそうだ。
ECBは先月、2018年1月以降に発生する不良債権について、担保がない部分は2年以内、担保がある部分は7年以内に100%の貸倒引当金を積むよう求めるルールを打ち出した。引き当ての期限や規模を明確にすることで、不良債権処理を加速させるのが狙いで、指針通りに処理できない銀行は詳しい説明を求められ、正当な理由がない場合は処分が下される。
欧州委は公表した協議文書で「拘束力のある措置や要求は、個々の銀行の状況に基づいてケースバイケースで適用されなければならない」と指摘。貸倒引当金の増額を求めるのは、カットオフデート(借入条件を変更するリスケジュールの対象債権を決める基準日)以降に発生した不良債権に限り、担保がある債権の引き当て期限については6~8年と幅を持たせるなどの対案を提示している。
ECBの指針案をめぐり、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のダイセルブルーム議長は6日、域内各国の財務相の間で基本的な合意が形成されていると表明した。しかし、欧州議会のタヤーニ議長はその後、新たな指針の策定プロセスに欧州議会が関与できるようにしなければならないと発言。国内の銀行が多額の不良債権を抱えるイタリアなどはECBにルールの緩和を求めている。こうしたなか、ECB銀行監督委員会のヌイ委員長は9日、各方面の意見を踏まえて指針案を見直し、導入時期も遅らせる用意があると発言していた。