EUがダンピング認定の新ルール導入、中国念頭に

EUは12月20日、域外からの輸入品が不当廉売(ダンピング)と認定する際の判断基準を定めた新ルールを導入した。鉄鋼などの過剰生産が問題視されている中国を念頭に、「国家の介入」によって国内価格を大幅に下回る価格でEU市場に輸出された製品に対し、反ダンピング措置をとりやすくする。中国側はEUへの反発を強めており、貿易をめぐる対立が先鋭化しそうだ。

新ルールの導入は、中国を市場経済国と認定するかどうかの問題が背景にある。中国は2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟した際、15年間は「非市場経済国」として扱われることに同意したが、同規定は16年12月に失効した。しかし、EUや米国などは市場経済国としての認定を見送っており、中国側は協定違反でWTOに提訴している。市場経済国に認定した場合、中国からの安価な輸入品に対して反ダンピング措置を発動することが困難になるため、EUでは中国を市場経済国として認定するか否かにかかわらず、WTOの法的義務に抵触することなく適切に対抗措置を講じることができるよう、ダンピング認定のルール見直しを進めていた。

新ルールでは輸出国が市場経済国か非市場経済国かにかかわらず、すべてのWTO加盟国を同等に扱う。ダンピングが疑われるケースで欧州委員会が「国家の介入によって市場価格に著しいゆがみが生じている」と判断した場合、反ダンピング課税で対抗措置をとれるようにする。その際、国の政策や影響力、国有企業の存在、国内企業を優遇する差別的措置、金融セクターの独立性の有無などが判断基準となる。さらに、劣悪な労働条件の下でコストを抑えて生産した製品を海外市場で廉売する「ソーシャルダンピング」や、環境基準が相対的に低い国で生産することで関連費用を内部化せずに価格を低く設定する「環境ダンピング」の実態も考慮して、総合的に判断することが可能になる。

欧州委は新ルール導入に合わせ、中国からの輸入品に関する456ページに上る報告書を公表。EUが問題視しているセクターでは政府が企業の資金調達や土地利用などに大きな影響力を持ち、その結果、市場価格に「重大なゆがみ」が生じていると結論づけた。

中国側はEUの動きに強く反発している。外務省の華春瑩報道官は21日の定例会見で、「EUは中国の経済発展について軽率に論評し、批判の口実をでっちあげた」と反論。「EUに対してWTOルールを尊重し、対抗措置を乱用しないよう強く求める」と述べた。

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