欧州議会とEU加盟国は12月21日、EU排出量取引制度(EU-ETS)でカバーされていないセクターにおける2030年までの温室効果ガス排出削減目標を設定し、各加盟国に割り当てる「努力分担に関する規則(Effort Sharing Regulation)案」の内容で基本合意した。EU全体で2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも40%削減するとの目標を達成するため、運輸や農業など、ETSの対象になっていない部門で同年までに05年比で30%の削減を目指す。欧州議会と閣僚理事会の正式な承認を経て新規則が施行される。
EUはETSを地球温暖化対策の重要な柱と位置付け、温室効果ガス削減目標の達成に向けて排出量取引の効率を高めるための制度改革を進めている。ただ、EU内ではETSでカバーされていないセクターからの温室効果ガス排出量が全体の半分以上を占めている。そこで欧州委員会は16年、すべての産業部門で低炭素社会の実現に向けた取り組みを加速させるための具体策として、非ETSセクターについても国別に拘束力のある削減目標を設定する新たな規則案をまとめ、欧州議会と閣僚理事会で検討を進めていた。
欧州議会と加盟国が基本合意した規則案は、運輸、建設、農業、廃棄物処理などの非ETSセクターで、21~30年に温室効果ガス排出量を05年比で30%削減するとの目標を掲げ、国民1人当たりの国内総生産(GDP)を基にした国別の削減目標を設定している。最も高い削減目標はルクセンブルクとスウェーデンの40%で、デンマークとフィンランドが39%、ドイツは38%、フランスは37%と続いている。一方、東欧諸国ではポーランドとハンガリーが7%、ルーマニアは2%に抑えられ、ブルガリアは0%となっている。
規則案には加盟国が削減目標を達成するにあたり、ETSの余剰排出枠のほか、土地利用の変更や森林整備などのプロジェクトによって生じた排出削減や吸収分などを一部活用できる措置も盛り込まれていた。ただし、EU全体で30%の削減目標を達成することが条件となる。