欧州委が米国製品への報復関税検討、トランプ政権の輸入制限に対抗

米トランプ大統領が鉄鋼・アルミの輸入品に新たに関税をかけると表明したことを受け、欧州委員会は対抗措置として、米国から輸出される28億ユーロ相当の製品に25%の報復関税を課す方向で検討に着手した。ロイター通信などが2日、複数のEU関係者の話として報じた。米側が輸入制限を正式決定すれば、週内にも対象品目を加盟国に提示し、報復関税の手続きに入るものとみられる。

トランプ氏は1日、鉄鋼メーカーなどの関係者との会談で、安価な製品の流入によって米国の雇用が失われ、「国家安全保障上の脅威」になっていると指摘。鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課す方針を表明した。トランプ氏は「来週中に正式決定する」と述べるにとどめ、対象国には言及しなかったが、商務省高官はすべての国に適用する可能性を示唆しており、鉄鋼製品の過剰な供給を続ける中国だけでなく、EUや日本などにも影響が及ぶ可能性がある。

欧州委のユンケル委員長は同日発表した声明で、トランプ氏の構想は「米国の国内産業を保護するためのあからさまな介入」で、世界の鉄鋼業界が抱える問題の解決にはつながらないと指摘。「不当な政策によって域内産業が打撃を受けるのを看過することはできない」と強調し、数日中に世界貿易機関(WTO)のルールに沿って米国への対抗措置を提案する方針を示した。さらにユンケル氏は2日、独メディアの取材に対し、報復関税の対象として「ハーレーダビッドソン(大型二輪車)やリーバイス(ジーンズ)、バーボン(ウイスキー)」などを検討していると述べた。

ロイター通信によると、欧州委は米国への対抗措置として、鉄鋼製品、鉄鋼以外の工業品、農産品に報復関税を適用する方向で検討を進めている。このほか日本やカナダなどと共同でWTOに提訴したり、米国の輸入制限を受けて欧州市場に鉄鋼などが大量に流入する事態を防ぐため、セーフガード(緊急輸入制限)を発動する可能性についても検討しているもようだ。

EU側の反応を受け、トランプ氏は3日、ツイッターに「EUが関税を引き上げた場合、EUから輸出される自動車に関税を課すことになる」投稿。EUが対抗措置を講じた場合はさらなる報復関税で応じる考えを示した。米国内では本格的な貿易戦争を懸念してトランプ氏に再考を求める声も出ているが、今年11月の中間選挙をにらみ、強硬姿勢を示すことで支持層にアピールする狙いがあるとみられる。