米コムキャストが英スカイに買収提案

米メディア大手コムキャストは2月27日、衛星放送大手の英スカイに総額221億ポンド(約3.3兆円)の買収案を提示した。スカイの筆頭株主である21世紀フォックスは昨年末、保有するスカイ株を含む映画やテレビ関連の資産を米ウォルト・ディズニーに売却することで合意していたが、そこへコムキャストがスカイ買収に乗り出した格好だ。今後はルパート・マードック氏率いるフォックスの出方がスカイ争奪戦の鍵を握ることになる。

買収案によると、コムキャストはスカイ株を1株につき現金12.5ポンドで買い取る。スカイの株式39%を握るフォックスは、ディズニーへの事業売却に先立ち、未保有のスカイ株を1株10.75ポンドで追加取得することで合意したが、メディア市場で寡占化が進むことを警戒する英競争当局が取引に難色を示し、審査が長引いている。今回コムキャストが提示した買収案は、フォックスがスカイ株の追加取得で合意した金額を約16%上回る水準となる。

スカイはマードック氏が立ち上げた欧州最大級の有料テレビ事業者で、英国、アイルランド、ドイツ、イタリア、オーストリアに約2,300万人の顧客を抱える。一方、コムキャストは米最大のケーブルテレビ(CATV)事業者で、全米テレビネットワークのNBCや映画制作・配給大手のユニバーサル・ピクチャーズなどを傘下に置く。スカイの買収が実現すると、コムキャストの顧客数は5,200万人を超え、米国以外の事業が売上高に占める割合は現在の9%から25%に拡大する見通しだ。

米国ではCATVなどの有料テレビを解約し、ネットフリックスをはじめとする定額制動画配信サービスに切り替える動きが加速している。コムキャストはスカイの買収を通じて海外事業を強化し、新たな収益源を確保することができる。また、オリジナル作品の配信に力を入れるネットフリックスやアマゾンに対抗するため、事業規模を拡大することで人気スポーツの放映権含むコンテンツを囲い込む狙いもある。

コムキャストのブライアン・ロバーツ最高経営責任者(CEO)は会見で、「コムキャストとスカイの組み合わせは完璧だ」と強調。スカイの完全買収を目指すが、まず50%の株式取得を実現したいと述べた。一方、市場関係者の間では、マードック氏がコムキャストの買収案を受け入れたうえで、ディズニーからさらに有利な条件を引き出すといった見方も出ている。

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