EUとトルコは3月26日、ブルガリア東部のバルナで首脳会談を開いた。EUが懸念を強めているトルコ国内の人権問題や、シリア北部のクルド人支配地域への軍事作戦などを巡って立場の違いが浮き彫りになり、関係修復の糸口を見出すことはできなかった。ただし、双方は今後も対話を続けることで一致した。
トルコのエルドアン政権は2016年7月のクーデター未遂事件をきっかけに強権化を加速させている。EUは大規模な取り締まりで多くのジャーナリスト、司法関係者、人権活動家などが逮捕されたほか、政権に批判的なメディアが相次いで閉鎖に追い込まれたことなどを問題視し、2005年にスタートしたトルコのEU加盟交渉を事実上凍結している。
EU側は首脳会談でも改めて人権状況の改善などを求めたが、トゥスク大統領は会談終了後の記者会見で「具体的な解決に向けた妥協は得られなかった」と発言。「(人権弾圧や法の支配など)EU側が懸念する問題で進展がなければ、加盟交渉を含めたEUとトルコの関係改善は望めない」と指摘した。
これに対し、エルドアン大統領はEUの拡大政策からトルコを除外することは「大きな過ち」と強調。隣国シリアのクルド人勢力を標的とした越境軍事作戦へのEU側の非難に対しては、「テロとの戦いへの公正さを欠いた批判ではなく、強い支持を期待する」と反論した。
欧州議会やEU加盟国の一部からはトルコとの加盟交渉を打ち切るべきだとの意見も出ている。クーデター未遂事件を受けたトルコ政府の対応を巡り、加盟交渉は現在、完全に停止しているが、EUは難民政策でトルコに大きく依存しており、EU側から交渉を打ち切ることは難しいのが実情。欧州委員会のユンケル委員長は首脳会談後、EUはトルコに対して移民政策に留まらず、安全保障上の戦略的パートナーとしての役割を望んでいると述べ、関係改善に向けて対話を継続することが重要と指摘した。