EUがVC向けファンド「ベンチャーEU」設立、新興企業への投資促進

欧州委員会は10日、EUと欧州投資基金(EIF)が総額4億1,000万ユーロを投じ、域内の革新的なスタートアップ企業への支援を目的とした「汎欧州ベンチャーキャピタル(VC)向けファンド(通称ベンチャーEU)」を設立したと発表した。EU主導でスタートアップ企業への投資を促し、企業価値が10億ドルを超える「ユニコーン」と呼ばれるベンチャー企業の育成を目指す。

ベンチャーEUの設立にあたり、EUは研究助成プログラム「ホライズン2020」から2億ユーロ、中小企業支援策「企業競争力と中小企業のためのEUプログラム(COSME)」から1億500万ユーロを拠出。EIFは6,700万ユーロを出資した。欧州委がファンドマネジャーに指名した投資ファンド6社がこれを元手に官民から21億ユーロを調達し、小規模のVCに資金を投下。小規模VCはさらに資金を集め、スタートアップや起業直後から急成長を遂げたスケールアップ企業に投資する。

投資対象となる分野は情報・通信技術(ICT)、デジタル、生命科学、医療技術、エネルギー効率化など。EU内の少なくとも4カ国をまたいだプロジェクトであることも支援の条件となる。欧州委はベンチャーEUを通じて域内の約1,500社が総額65億ユーロの資金を調達できるとみている。

欧州委によると、2016年のEU域内におけるVCの投資総額は65億ユーロと、米国の約400億ユーロと比べて6分の1程度。VCファンドの規模も平均5,600万ユーロと、米国の約3分の1にとどまる。さらにユニコーン企業の数を比較すると、EU域内では17年時点で26社にとどまり、米国の109社、中国の59社を大きく下回った。

欧州委のカタイネン副委員長(雇用・成長・投資・競争力担当)は「VCでは規模が何より重要だ。ベンチャーEUの設立によって多くの起業家がイノベーションと世界的企業への成長に必要な投資を受けることができ、雇用の創出と経済成長につながる」と強調した。

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