日野自動車と独フォルクスワーゲン(VW)の商用車部門フォルクスワーゲン・トラック・アンド・バスは12日、戦略的提携に向けた合意書に調印したと発表した。世界市場でのプレゼンスを強化するほか、業界が抱える課題に共同で取り組む考え。日野の下義生社長(最高経営責任者=CEO)は親会社トヨタ自動車の最大の競合であるVWと戦略協業することについて、商用車分野の課題をトヨタグループのなかで解決するのは難しいと説明した。
両社は「物流/交通に関わるソリューション調査」「既存・将来技術」「調達」などの分野で協力を検討する。技術領域では既存の内燃パワートレーン、ハイブリッド/電動パワートレーン、コネクティビティー、自動運転システムなどが対象となる。
協力の方向性を議論するために「アライアンス委員会」を立ち上げる。同委は両社のCEOと役員級のメンバーで構成。既存/将来技術分野での協力の可能性を調査・評価する。例えば、既存内燃パワートレーンや将来の輸送を踏まえた新技術分野で協力の可能性を検討する。
日野の下社長は「急速なeコマースの普及等により『輸送』が新たな課題に直面する中、日野とフォルクスワーゲン・トラック・アンド・バスが戦略的協力関係の構築を目指すことは大きな意義を持つ」と強調した。
VWはこれまで主に欧州と南米に限られていた商用車事業をグローバル化し、同分野で世界最大手となることを目指しており、2016年には米同業ナビスターと戦略提携合意した。これまで手薄だった北米市場に本格進出することが狙いで、ナビスターに16.6%出資するとともに、技術、部品供給、調達で協働している。出資比率を今後、引き上げたり、吸収合併する可能性を排除してない。中国でも子会社MANを通して現地トラック大手の中国重汽に出資している。
フォルクスワーゲン・トラック・アンド・バスのアンドレアス・レンシュラーCEOは日野との協業について「輸送業界のグローバルチャンピオンになるとういう戦略に貢献するものだ」と明言した。