スイス金融大手のUBSがユーロ圏の企業600社を対象に行った調査で、半数近い企業が英国事業の縮小や撤退を計画していることが分かった。EU離脱交渉が北アイルランドの国境管理問題が障害となって難航しており、通商協定などがまとまらないまま2019年3月の離脱期限を迎える最悪のシナリオが現実味を帯びてきたことが背景にある。
調査は5月8日から29日にかけて行われた。それによると、全体の31%が「英国事業の大半」を国外に移転する計画と答え、英国からの「完全撤退」を計画している企業も13%に上った。英国事業の移転先としては、ユーロ圏を検討している企業が半数を占めたほか、32%が中東欧諸国を挙げた。一方、全体の20%が移転はまったく考えていないと答え、5%は逆に英国事業の拡大を計画していると回答した。
ユーロ圏に拠点を置く企業にとっての懸念要素としては、「EUの将来」と答えた企業が最も多く、「英離脱を巡る不透明感」、「米トランプ政権の政策」と続いている。
欧州航空機大手エアバスは先月末、英国のEU離脱交渉が不調に終わった場合、英国内の拠点の縮小や撤退を検討せざるを得ないと警告した。独高級車大手BMWも今後2~3カ月以内に離脱条件が明確にならない場合、「緊急時対応計画」を策定する必要があると指摘。独シーメンスも英国が合意に至らないままEUから離脱する事態になれば、英国事業への投資を抜本的に見直すことになると警告し、英政府に対して早期に離脱条件をまとめるよう求めている。