欧州委員会は23日、仏防衛・電子機器大手タレスがオランダのデジタルセキュリティー大手ジェムアルトを買収する計画について、本格的な調査を開始したと発表した。両社の取引を認めた場合、データ暗号化ソリューションの分野で競争が阻害される恐れがあるという。11月29日までに買収を承認するかどうか判断する。
ジェムアルトは企業や公的機関に暗号化などのセキュリティサービスを提供するほか、携帯電話のSIMカードや銀行向け認証ソリューションなどを手がける。一方、タレスは防衛、航空宇宙、運輸部門の情報システムや、サイバーセキュリティ事業を展開している。タレスは昨年12月、約48億ユーロでジェムアルトを買収すると発表。6月18日付で欧州委に買収計画の届出を行った。
欧州委が問題視しているのは、データの暗号化に必要な「鍵」を保管するためのハードウェアセキュリティモジュール(HSM)と呼ばれるソリューション。同分野で共に世界有数の企業であるジェムアルトとタレスの統合が実現すると顧客の選択肢が狭められ、価格の上昇やイノベーションの停滞といった弊害が生じる恐れがあると指摘している。
欧州委のベステアー委員(競争政策担当)は「現代社会はデータセキュリティソリューションに大きく依存している。本格調査を通じ、タレスとジェムアルトの取引によってHSM分野で公正な競争が阻害される可能性がないかどうかを慎重に判断する」とコメントした。