欧州委がWTO改革案を発表、通商ルール刷新など提案

欧州委員会は18日、世界貿易機関(WTO)の改革案を発表した。急速に存在感を増す中国などを念頭に、世界経済の実態に即した通商ルールを早急に整備する必要があると指摘。産業補助金など市場を歪める貿易慣行に対する監視強化や、紛争解決手続きの見直しなどを提案している。

WTOをめぐっては、トランプ米大統領が脱退の可能性を示唆しており、機能不全に陥る懸念が高まっている。欧州委のマルムストローム委員(通商担当)は「オープンで公正な、ルールに基づいた多国間の貿易システムを維持するうえで、WTOは引き続き不可欠な存在だが、急速に変化する世界経済に十分に対応できていないのが実情だ」と指摘。WTOが効率的に機能するよう改革を推進する必要があると訴え、EUが中心的役割を担わなければならないと強調した。

欧州委がWTO改革の柱と位置づけている優先課題は◇世界経済の実態に対応した通商ルールの刷新◇不公正な貿易慣行に対する監視機能の強化◇機能不全に陥る寸前の紛争処解決制度の現状打開――の3点。中国を念頭に、国営企業に対する国家補助が引き起こす市場歪曲や、外資規制を通じて進出企業に技術移転を強要するといった不適切な慣行に対抗するためのルール整備のほか、自国の貿易政策について加盟国への通報義務を怠った場合の制裁の導入などを提案している。

一方、紛争解決制度をめぐっては、米政府がWTOの最高裁判事にあたる上級委員の選定に拒否権を発動しており、定員7人のうち現在3人が欠員になっている。WTOでは1つの案件を3人の上級委員が担当する仕組みだが、9月末には4人目の任期が切れるため、このままでは紛争解決制度の維持が極めて困難になる。欧州委は事態の打開に向け◇安定的な運営を確保するため、上級委員の定員を9人に増やす◇上級委員会の独立性を高めるため、任期を現在の4年から最大8年に延長する一方、再任できないシステムに変更する(現在は反対がなければ2期まで務める仕組み)――などを提案している。

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