アイルランド政府は18日、欧州委員会から命じられた米アップルへの追徴課税に利息を加えた総額143億ユーロを同社から回収したと発表した。アップルに対するアイルランドの税優遇措置を違法な国家補助と認定した同事案は、ひとまず区切りを迎えた。ただ、アイルランドとアップルは欧州委の命令を不服としてEU司法裁判所に提訴しており、最終決着には数年かかるとみられている。
多国籍企業による課税逃れに対して国際的な批判が高まる中、欧州委は一部の加盟国が誘致や雇用創出の見返りに、特定の企業に適用している税優遇措置がEUの国家補助規定に違反している可能性があるとして、2014年に本格調査を開始した。同委は16年8月、アイルランドがアップルに適用していた税優遇措置を違法な補助金と認定し、同国政府にアップルへの追徴課税を命じた。
アイルランド政府とアップルは欧州委の決定を不服とし、EU司法裁の一般裁判所に追徴課税の取り消しを求める訴訟を提起した。しかし、欧州委は昨年10月、追徴命令から1年以上経過してもアイルランドが課税を実行していないとして、EU法上の義務不履行で同国を司法裁に提訴する方針を表明。これを受けてアイルランド政府は今年4月、アップルから追徴課税金の回収を開始することで合意した。
アイルランドのドナフー財務相によると、政府は9月初めまでに追徴分の131億ユーロと利息の12億ユーロを回収した。司法裁が欧州委の追徴命令をめぐる訴訟の判決を下すまで、資金は第三者が管理するエスクロー勘定(預託口座)で全額保管される。ドナフー氏は声明で「アイルランド政府は根本的に欧州委の分析に反対で、決定の取り消しを求めている。しかしEU加盟国として、国家補助とみなされた資金を回収する姿勢を常に示してきた」とコメントしている。