EU加盟国は19日、肥育ホルモン剤を使用した米国産牛肉の輸入制限をめぐる通商紛争の解決に向け、欧州委員会が米国との交渉を開始することを承認した。ホルモン牛肉問題は、ユンケル欧州委員長とトランプ米大統領が7月に合意した貿易摩擦の緩和に向けた取り組みに含まれていないが、欧米間の緊張緩和につながる可能性がある。
世界貿易機関(WTO)は1998年2月、発がん性などを理由とするEUの禁輸措置は科学的なリスク評価に基づくものではないとする米側の主張を認め、米国がEUに対して制裁措置を講じることを認める裁定を下した。これを受けて米政府はロックフォール・チーズ、トリュフ、フォアグラ、ディジョン・マスタードなどに100%の報復関税を課した。一方、EUは2003年9月に肥育ホルモンの使用規制を強化する新指令を採択。ホルモン牛肉の禁輸措置は新指令に基づく正当な措置だと主張し、WTOに米国を逆提訴した。
WTO上級委員会は08年、EUによる禁輸措置の妥当性を判断するには科学的なデータを基にさらに詳しく検証する必要があると結論づける一方、米国による制裁措置は禁輸への対抗策として正当化できるとの見解を示した。これを受けてEUは09年、成長を促すホルモン剤を使わずに育てた牛肉について、年間4万5,000トンの無関税輸入枠を設けることを決めた。しかし、この枠は米国産に限定したものではなく、豪州やアルゼンチン、ウルグアイ産なども含まれていた。第3国からの輸入が増えたことで米国産のシェアは縮小傾向にあり、米側は不満を募らせていた。
欧州委は加盟国の承認を受け、ただちに米国との交渉に入る意向を示している。全体の輸入枠は現状を維持したまま、一部を米国産に特定して割り当てることで、同国からの輸入を拡大することを提案する方針だ。