サマータイムの19年廃止は「非現実的」、議長国が21年延期を提案

EUは10月29日、オーストリアのグラーツで非公式の運輸相会合を開き、サマータイム(夏時間)の廃止時期について協議した。欧州委員会は2019年の廃止を提案しているが、会合では「非現実的」との意見が相次ぎ、議長国オーストリアは21年廃止の対案を提示した。加盟国は12月上旬に開く運輸省理事会での正式合意を目指して意見調整を進める。

EUでは3月の最終日曜日に時計を1時間進めて夏時間とし、10月の最終日曜日に標準時間に戻すサマータイム制度を採用している。しかし、近年は省エネ効果が乏しいうえ、高齢者や子どもの健康への影響も指摘され、廃止論が高まっていた。

欧州委のユンケル委員長が9月に公表したサマータイム廃止計画によると、EU加盟国は現行の「夏時間」と「冬時間」のどちらを通年で適用する「標準時間」に設定するかを決め、来年4月までに欧州委の通知する必要がある。つまり、各国は従来通り、来年3月の最終日曜日に夏時間に切り替えたうえで、冬時間を標準時間として採用する国は10月の最終日曜日に時間を戻し、夏時間を採用する国はそのまま継続することになる。しかし、隣接する国がそれぞれ異なる標準時間を選んだ場合、域内のタイムゾーンが複雑になり、航空機の運航などに影響が出る可能性がある。

オーストリアのホーファー運輸相は会合後の記者会見で、サマータイムの廃止については大半の加盟国が合意しており、オーストリアとしてもできるだけ早期に実現したいと考えているものの、19年は「野心的すぎる」と指摘。例えば航空業界の場合、標準時間の変更に伴う運航スケジュールの調整に「少なくとも18カ月を要する」と説明し、域内で標準時間帯が「パッチワーク状」になる事態は避けなければならないと強調した。同氏によると、会合では廃止時期を21年に先送りすべきだとの同国の提案に対し、多くの国から賛同が得られたという。

一方、デンマークのオーレセン交通相は、同国では国民の間でサマータイム廃止に関する議論が進んでおらず、夏時間または冬時間を選択することでどのような影響が出るかについても十分に理解されていないと説明。来年の廃止は現実的ではないとの認識を示した。

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