独仏2社の鉄道事業統合、欧州委が異議告知書送付

欧州委員会は10月31日、独電機大手シーメンスと仏鉄道車両・設備大手のアルストムが鉄道事業を統合する計画をめぐり、両社に異議告知書を送付したことを明らかにした。事業統合を認めた場合、鉄道車両や信号システムの分野で市場競争が阻害され、最終的に消費者に悪影響を与える可能性があると判断した。欧州委は12月半ばまでに改善策を提示するよう求めており、市場では両社が認可に向けて資売却に踏み切るとの見方が広がっている。

シーメンスは昨年9月、鉄道事業を柱とするモビリティソリューション部門をアルストムと統合し、新会社シーメンス・アルストムをパリまたはその近郊に設立すると発表した。鉄道車両市場では中国国営2社の合併で誕生した中国中車(CRRC)が圧倒的なシェアを持つため、グローバル市場で対抗するためには欧州大手2社の統合が不可欠と説明していた。

これに対して欧州委は7月、鉄道車両世界2位と同3位の統合が実現すると、欧州では統合新会社のシェアが2位以下の3倍に達し、信号システムなどの分野でも公正な競争が阻害される恐れがあると指摘。また、当面CRRCが欧州市場に本格参入する可能性は低いとの見方を示し、統合計画に関する本格調査に着手した。

欧州委の報道官は電子メールで「シーメンスとアルストムに対して異議告知書を送付したことを確認する。調査は現在も進行中だ」とコメント。一方、シーメンスの広報担当は異議告知書を受け取ったことを認め、「引き続き2019年前半に取引を完了できると確信している」と述べた。アルストムの広報担当も同様の見解を示したうえで、「われわれには欧州委に回答する機会が与えられている。異議告知書は欧州委の最終判断を示すものではない」とつけ加えた。

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