ESMAが「合意なき離脱」の準備に着手、英清算機関の業務継続を可能に

欧州証券市場監督機構(ESMA)は23日、英国がEUからの無秩序な離脱を迫られた場合に備え、デリバティブ(金融派生商品)市場が混乱する事態を避けるための措置に着手すると発表した。

EUは25日の緊急首脳会議で英国のEU離脱案を正式決定したが、英国内では離脱案への反発が根強く、議会で否決される可能性がある。ESMAはメイ英首相が議会の承認を得られず、最終的に合意なき離脱となって移行期間が設けられない場合でも、当面はEU側の顧客が引き続き英国の清算機関を利用できるようにするための手続きに入ると説明している。

企業が相場変動のリスク回避などに利用しているデリバティブ取引では、欧州における中央清算機関としてロンドン証券取引所グループのLCHクリアネットが圧倒的なシェアを握っている。最悪のシナリオである合意なき離脱になった場合、現行ルールではEU内に拠点を置く金融機関はLCHクリアネットを利用できなくなるため、デリバティブ取引の決済処理が行われず市場に深刻な影響が及ぶことになる。

ビルロワドガロー仏中銀総裁は23日にパリで開かれた規制当局者の会合で、合意なき離脱となった場合に取引の継続性を確保するため、「1年程度の一時的措置」を容認する考えを示した。同氏はこれまで、英国の清算機関が離脱後にEUの監督が及ばない状態でEU市場にアクセスすることに反対していた。

欧州委員会によると、ESMAは合意なき離脱を迎えた場合の緊急対応策の実施に備え、英国の清算機関と連携をとっているという。

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