欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2018/12/3

EU情報

50年までに温効ガス「実質ゼロ」に、欧州委が長期戦略を発表

この記事の要約

欧州委員会は11月28日、2050年までにEU域内の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を柱とする長期戦略を発表した。EUは20年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みを定めた「パリ協定」に基づき […]

欧州委員会は11月28日、2050年までにEU域内の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を柱とする長期戦略を発表した。EUは20年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みを定めた「パリ協定」に基づき、域内の温室効果ガス排出量を30年に1990年比で40%削減するとの目標を掲げているが、2日にポーランドで開幕した気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)では協定の詳細な運用ルールを決めることになっており、他の国・地域に先駆けて野心的な長期目標を打ち出すことで協議の主導権を握る狙いがある。

16年11月に発効したパリ協定は、世界全体の気温上昇を産業革命以前と比べて2度より十分低く保つとともに、1.5度に抑える努力を追求することを明記している。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は10月に報告書をまとめ、気温上昇を1.5度に抑えるには森林や新技術などによる吸収で、50年頃までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする必要があると指摘した。欧州委が提案する長期戦略はIPCC報告に沿ったもので、これをたたき台に域内での議論を本格化させ、19年末までに50年を達成期限とする新たな目標の正式採択を目指す。

欧州委のカニェテ委員(気候行動・エネルギー担当)は「EUが最初にカーボンニュートラルを実現する様子を世界に示すことになる。気温上昇を1.5度に抑えるための取り組みをリードしなければならない」と強調した。

ただ、実際に目標を達成するのは容易ではない。温室効果ガス削減の切り札とされる、火力発電所や工場などから排出される二酸化炭素(CO2)を分離・回収して地中に貯留する「CCS」技術が実用化されていないうえ、コスト面の問題もある。欧州委の試算によると、50年までにカーボンニュートラルを実現するには年間1,750億~2,900億ユーロの追加投資が必要。一方、同年までに85%の削減(2度の気温上昇)を目指す場合の追加投資は750億~1,750億ユーロとなっている。一方、カーボンニュートラルが実現するとエネルギー輸入額は70%削減され、50年までに域内総生産を2%押し上げると見積もっている。