欧州議会と閣僚理事会、欧州委員会は20日、EU域外の企業による欧州企業の買収に対する審査を強化するための法案の内容で暫定合意した。今後、欧州議会と閣僚理事会の採択を経て新ルールが導入される。
EU内では数年前から中国企業による買収が相次いでおり、技術流出とそれによる安全保障への影響を懸念する声が高まっている。欧州委は外国からの投資を制限する一方、国家主導の対外直接投資によって戦略目標を達成しようとする新興国の動きを問題視し、昨年9月に戦略的に重要な企業を標的とした買収への監視を強化するための具体策を提案した。
法案によると、ハイテク、インフラ、エネルギー、防衛など戦略的に重要な産業分野を対象に、買収の審査基準をEU域内で統一し、欧州委と加盟国は安全保障や治安などの側面から域外企業による買収や資本参加を審査できるようになる。具体的にはまず、買収ターゲットとなった企業が拠点を置く加盟国が予備的な審査を行い、欧州委と他の加盟国に結果を報告。EU全体で情報を共有し、加盟国の3分の1以上が買収計画に懸念を表明した場合、欧州委員会は買収認可の可否について意見を伝えなければならない。ただし、最終判断は標的となった企業が拠点を置く国に委ねられる。
一方、域外からの投資に複数の加盟国が関与するケースや、複数のパートナーによる研究開発プロジェクトを支援する枠組み「ホライズン2020」、欧州衛星測位システム「ガリレオ」など、EU全体の利益に影響が及ぶ案件については欧州委が直接審査を行う。
EU加盟国のうち、中国から大規模な投資を受け入れているギリシャやキプロスなどは審査の厳格化に反対している。EU議長国オーストリアのシュラムベック経済相は会議後の会見で、「法案はEU市場を閉ざすものではなく、責任ある行動をとるということだ」と強調。加盟国に対し、速やかに3機関による今回の合意を支持するよう呼びかけた。