欧州議会とEU加盟国は20日、域内で販売される肥料に関するEU規則の改正案について協議し、リン鉱石を原料とするリン酸肥料に含まれるカドミウムの許容値を1キロ当たり60ミリグラムとすることで基本合意した。欧州議会と閣僚理事会で採択した後、3年の移行期間を経て新規制の適用を開始する。
リンは肥料や家畜飼料添加物として広く利用されており、欧州では作物や家畜に吸収されなかった部分が農地から河川や海水に流入して水質汚染を引き起こしているケースが多い。また、リン鉱石に含まれる重金属による土壌汚染も問題になっている。
欧州委員会はこうした問題に対処して安全な肥料の流通を促すため、2016年にリン酸肥料に含まれるカドミウムの許容値を域内で統一することを提案した。しかし、原料のリン鉱石は産地によってカドミウムの含有量が大きく異なるため、EUが厳格な規制を導入した場合、カドミウム含有量が多いリン鉱石を産出するモロッコやチュニジアなどは大きな打撃を受けるとして、一部の加盟国が強く反対していた。
改正案によると、域内で販売されるリン酸肥料のカドミウム許容値は1キロ当たり60ミリグラムとし、基準に適合していることを示すCEマークの表示を義務付ける。含有量が20ミリグラム未満のものに関しては、任意ベースで低カドミウムであることを示す「Low Cd」マークを導入する。欧州委は新規制の適用開始から4年後に許容値を見直し、引き下げが可能かどうか検証する。