フランスのマクロン大統領は11月27日、2035年までに国内の総発電量に占める原子力の割合を現在の72%から50%に引き下げると発表した。オランド前政権は25年までに原発依存率を50%に削減する目標を掲げていたが、再生可能エネルギーへの転換を進めながら電力の安定供給を確保するため、「現実的なアプローチ」として目標を10年後退させた。
マクロン氏は向こう数年間のエネルギー政策に関する演説で、国内で稼働している原子炉58基のうち、14基を35年までに閉鎖する計画を明らかにした。20年夏にフランス最古のフェッセンハイム原発にある2基を廃炉にし、再生可能エネルギーの導入状況などをみながら30年までに4~6基、35年までに残りの原子炉を閉鎖する。
対象となる原子炉は出力が低く、老朽化が進んでいるものが中心で、マクロン氏の任期中(最長で27年まで)に閉鎖されるのは最初の2基のみとなる見通し。一方、二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力発電所は、22年までに国内にある4基すべてを閉鎖する。
さらに再生可能エネルギーへの転換を推進するため、30年までに風力発電と太陽光発電の出力をそれぞれ現在の3倍、5倍に増やす目標も打ち出した。
マクロン政権は当初、前政権が掲げた原発依存率の削減目標を引き継ぎ、25年までに稼働している原子炉の4分の1程度を閉鎖する方向で検討していた。しかし、燃料税引き上げに対する抗議デモが続く中、無理に原発閉鎖を進めれば財源の確保が難しくなり、さらなる増税への懸念から国民の不満が噴出する恐れがある。
マクロン氏は削減目標を先送りした理由ついて、「エネルギーの安定供給を考慮した現実的なアプローチだ」と強調。さらに「段階的に原発を削減するが、全面放棄するわけではない」と述べ、仏電力公社(EDF)に最新式の欧州加圧水型炉(EPR)の増設が実現可能か調査するよう要請したことを明らかにした。