EU加盟国は4日に開いた財務相理事会で、米グーグルやアップルなどの大手IT企業を対象とする「デジタルサービス税」の導入案について協議した。加盟国の意見が分かれる中、同案を支持するフランスとドイツが妥協案を提示したものの決着せず、年内の合意を断念。独仏案を軸に今後も協議を続けることになった。
デジタル税導入は、欧州委員会が3月に提案したもの。現行の課税制度では、国内にオフィスや工場など物理的な拠点を持たない企業に対し、原則として法人税を課せない仕組みとなっており、EU内で国によって異なる課税ルールを利用したネット企業などによる課税逃れが問題になっていることが背景にある。
欧州委案によると、デジタル税の課税対象となるのは世界全体の売上高が年間7億5,000万ユーロを超え、EU域内の売上高が5,000万ユーロを上回る企業。国内に物理的な拠点がないため現行制度では課税を免れている企業も対象となる。課税ベースでは利益ではなく売上高で、サービス利用者の居住地ごとに加盟国がオンライン広告やサービス仲介などの売上高に3%を課税する仕組みだ。欧州委によると、域内で活動する120~150社が対象になる見通しで、EU全体で約50億ユーロの税収を見込む。
同案のような税制改革には、全ての加盟国による全会一致の承認が必要となる。フランスやイタリアなどがデジタル税の導入を支持する一方、低税率を武器にIT企業を誘致してきたアイルランドやルクセンブルク、米国の報復措置を恐れる北欧諸国などは導入に難色を示しており、調整が難航していた。
デジタル税導入派の急先鋒であるフランスは、ドイツの支持を取り付けた上で、事態を打開するため、課税の対象をインターネットでの広告収入に絞り込む妥協案をまとめ、提示した。これによって対象はグーグル、フェイスブックなどに限定される。データ販売、オンライン通販の売上げなどは課税されず、IT大手でもアマゾン、アップルなどは対象外となる見込みだ。
妥協案にはデジタル税の導入開始について、2021年1月まで先送りし、短期的な暫定措置として25年には廃止することや、IT企業への課税問題をめぐる国際的な解決策が経済協力開発機構(OECD)で打ち出されない場合に限って導入するという条件も盛り込まれた。
それでも今回の財務相理事会では合意に至らず、同妥協案に基づいて引き続き協議することで一致するにとどまった。19年3月までの合意を目指し、調整を進めることになる。
EUでは来年に離脱することになっている英国が10月下旬、大手IT企業を対象とする独自のデジタル税を導入すると発表した。検索エンジンやソーシャルメディア、ネット通販などのプラットフォームを運営する企業のうち、世界の売上高が5億ポンド(約720億円)以上の企業が対象で、英国内で稼いだ収入に2%を課税するという内容だ。2020年4月の導入を目指している。