英メイ政権が議会で苦境、EU離脱案の採決めぐり

英国議会で11日、EUと合意した離脱案の可否をめぐる採決が行われる。合意案がEU残留派と「ハード・ブレグジット(強硬離脱)」派の双方から批判を浴び、与党・保守党から一部でも造反が出れば離脱案を批准できない状況にある中、4日から5日間にわたって行われた審議では、離脱交渉で法務長官が行った法的助言の内容を公表するよう求める動議が政府の意に反して可決されるなど、メイ首相にとって厳しい状況で、批准の目途は立っていない。

EUは25日に開いた臨時首脳会議で、英国の離脱条件を定めた離脱協定案と、離脱後の双方の関係の大枠を定める政治宣言案で正式合意。欧州議会と英議会の批准を経て発効となる。

英議会ではEU残留派だけでなく、強硬離脱派が移行期間設定によって離脱が実質的に先送りされ、当面は英国がEUのルールに従わなければならない一方で、EUの意思決定に参加できないことを問題視し、合意に猛反発。11日の採決では野党がそろって反対票を投じる意向を表明している。下院で過半数ぎりぎりの状況にある保守党内でも造反の動きがあり、メイ首相は反対派の切り崩しに躍起だ。

しかし、審議初日の4日、コックス法務長官が行った法的助言の公表を拒む政府を「議会侮辱に当たる」として非難する動議と、議会が離脱案を否決した場合に、その後の離脱手続きで議会の権限を強化するよう求める動議が、与党議員の一部も賛成に回って可決。政府は5日に法的助言の公表を迫られた。メイ政権の基盤が揺らいでいることを裏付けた格好だ。英国での報道によると、保守党では100人程度の下院議員が合意案に反対しており、批准に必要な過半数の支持を取り付けるのは極めて難しい情勢だ。

批准が否決された場合、英政府は21日以内に、どのような措置を講じるかを決める。仮に修正案をまとめ、議会の承認を得たとしても、EUとの再交渉が必要で、合意に至るかどうか不透明。交渉にも時間がかかり、2019年3月末の離脱期限までに決着せず、合意なき無秩序な離脱を迫られかねない状況だ。このため、離脱期限の延長、EU離脱の是非を問う国民投票の再実施といった選択肢が浮上する可能性がある。

こうした中、EU司法裁判所は4日、英国は他の加盟国の同意がなくても離脱を一方的に撤回できるという法務官見解を出した。このため、EU残留派で国民投票再実施を目指す動きが活発化することが予想される。

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